The 54th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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ポスターセッション

術後遠隔期・合併症・発達

ポスターセッション03(P03)
術後遠隔期・合併症・発達 1

Thu. Jul 5, 2018 6:00 PM - 7:00 PM ポスター会場 (311+312+313+315)

座長:家村 素史(聖マリア病院 小児循環器科)

[P03-02] 動脈管のクリッピング後に左肺動脈の血栓性完全閉塞をきたした一例

岡 俊太郎1, 石戸 博隆2, 岩本 洋一2, 増谷 聡2, 先崎 秀明2,3 (1.埼玉医科大学 総合医療センター 小児科新生児部門, 2.埼玉医科大学 総合医療センター 小児科小児循環器部門, 3.北里大学 新世紀医療開発センター 先端医療領域開発部門 小児循環器集中治療学)

Keywords:動脈管, 術後, 肺動脈血栓

【背景】動脈管開存(PDA)のclippingには安全性・確実性および短い手術時間という利点があるが、clipよる他の心血管構造圧排への懸念は否定できない。
【目的】成熟児のDA clipping術後半日で左肺動脈(LPA)が急速かつ完全な血栓性閉塞に至った症例を経験した。稀だが重要な合併症と考えられるため報告する。
【症例】在胎38週0日、児頭骨盤不適合のため帝王切開にて出生。体重2870g、Apgar score 8/9。胎児期に両側側脳室拡張、頭囲拡大、単一臍帯動脈を指摘され、生後に顔貌異常を認めたが、G-bandは正常であった。甲状腺機能低下がありlevothyroxineを内服。呼吸窮迫・体重増加不良を認め、心エコー上PDAが径4-5mmで、LA/Ao比=1.8、LPAの拡張期血流が増大、胸部X線上両肺野の透過性低下が著明だった。抗心不全療法のみでは改善せず、インダシン投与を試みたが無効のため、日齢28にDA clippingを施行した。術後8時間頃より前負荷不足によると思われる血圧低下を認め、容量負荷・強心剤投与により改善。その後SpO2=70%前後の低酸素血症を認めた際の心エコーでLPA全体の血栓性閉塞を確認した。clipはPA分岐部から1cm程度遠位に存在した。血栓が右肺動脈へも進展したためt-PAによる血栓溶解を試み、血栓は縮小したが、LPA血流は再開しなかった。外科施設に転院しclipping解除/DA division術後に経カテーテル的血栓吸引療法にて開通し改善した。
【考按】DA clipのLPA分岐部や左主気管支への干渉は元々懸念されるが、本症例では心エコー上典型的なPA分岐部圧排の所見に乏しく、再手術中に認めたDA aneurysm(clipのPA側に存在)の関連(血栓の結果か否かは判然とせず)や、DAと遠位LPAが通常より近接しており圧排が起きた可能性も疑われた。今後のDA clipping術後の循環不全では、負荷条件や左心機能の問題の他に、肺動脈内血栓の鑑別も重要と考えられた。