[P03-05] 睡眠時無呼吸症候群を合併したFontan 術後ダウン症候群の1成人例
キーワード:ダウン症候群, フォンタン手術, 睡眠時無呼吸症候群
【背景】ダウン症候群に対する単心室修復の報告は散見するが、依然として長期予後については不明である。一方、ダウン症候群の患者は成長するにつれ高頻度に閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)を合併する。今回Fontan手術を施行したダウン症候群患者で成人期に至り、OSAを合併した1例を経験したので報告する。【症例】25歳男性、ダウン症候群, TOF, Straddling of tricuspid valveの診断で、2歳9か月でBDG、4歳5か月でFontan手術(Extracardiac conduit)を施行し、術後のCVPは15mmHgであった。15歳ごろより多血症を認めていたが、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の疑いにて、簡易睡眠無呼吸検査を施行。AHI35.4/Hr, 酸素飽和度<90%が42.5分, 最低酸素飽和度79%であり治療適応のあるOSAの所見であった。今回、Fontan術後の評価とOSAに対するBiPAPの影響を判断する目的で心臓カテーテル検査(心カテ)を施行。入院時現症は身長154cm、体重63.1kg、BMI 26.6 kg/m2、SpO2 93%、扁桃肥大なし。心臓カテ所見は平均肺動脈圧8 mmHg、C.I. = 2.3 L/min/m2、Rp = 0.90 U・/m2、PA index = 390mm2/m2であった。心カテ中にBiPAP AutoSV advancedを使用しCPAPモードにてPEEPを4mmHg, 6mmHg, 8mmHgと設定し肺動脈圧を測定したが、どの設定においても肺動脈圧は8mmHgと変化はなく、PEEP 8mmHgでのRp =0.90 U・/m2 と増悪はなかった。今後BiPAP導入を検討していく方針である。【考案・まとめ】ダウン症候群に対するFontan手術は胸水の遷延などの術後合併症や死亡のリスクが高いとされている。本症例は成人期に至っても肺動脈圧は問題なく、良好なFontan循環が成立していた。一方、本症例は治療適応のあるOSAの合併を認めた。6mmHg以上のPEEPがFontan循環に悪影響を及ぼす可能性が報告されており、本症例はBiPAP使用下にて心カテ評価を行ったが、PEEP8mmHgまでは肺動脈圧や肺血管抵抗に変化はみられず、BiPAPの導入は可能と判断した。