[P08-04] マイコプラズマ肺炎が関連した肺塞栓症の一例 -当院での緊急ECMOの経験-
Keywords:マイコプラズマ肺炎, 肺塞栓症, ECMO
【背景】体外式膜型人工肺(以下ECMO)は専門的治療であり、経験・人材豊富な集中治療施設での実施が望まれる。当院は小児の実施経験が乏しかったが、肺塞栓症で急激な状態悪化を認め、ECMOを導入した症例を経験した。導入~搬送までの経過、行った工夫について報告する。【症例】マイコプラズマ肺炎で入院加療中の5歳男児。第9病日に解熱が得られず、抗菌薬をCAMからTFLXへ変更、プレドニゾロン投与も開始した。第11病日、突然の呼吸障害とSpO2低下を認めた。マスク換気と高濃度酸素で状態は改善せず気管内挿管を実施したが、SpO2は上昇しなかった。胸部単純X線で無気肺や気胸は認めなかった。心エコーでsevere PH moderate TRを認めた。造影CTで両側肺塞栓症と診断しECMOの適応と考え専門施設へ搬送依頼した。しかしSpO2はさらに低下し、血圧も低下傾向となった為、搬送前のECMO導入に踏み切った。右内頸静脈、右大腿動脈よりカニュレーションを行い、発症から3時間半でV-A ECMO開始に至った。還流安定と共にSpO2、血圧も上昇傾向となった。その後専門施設へ搬送し、治療を継続した。【ECMO導入の工夫】穿刺にあたり、特に送血は成人と同様に大腿動脈を選択することで、恙なくアプローチ可能であった。カニューレは成人腋窩動脈送血用に備えられていた小児用デバイスを用いた。成人用回路を用いるにあたり、回路チューブは10mmから6mmにサイズダウンしてプライミングボリュームを減少させた。回路の充填法は生理食塩水を濃厚赤血球輸血とアルブミン製剤で置換する方式とし、自己血回収装置も利用することでヘモグロビンの維持に努めた。【考察】ECMO導入は苦渋の選択であったことは間違いない。しかしながら今回の判断は、本症例が搬送先を退院後、intactで生活されている一助にはなったと確信する。