第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

心不全・心移植

ポスターセッション14(P14)
心不全・心移植 1

2018年7月5日(木) 18:00 〜 19:00 ポスター会場 (311+312+313+315)

座長:小野 博(国立成育医療研究センター 循環器科)

[P14-02] Panel reactive antibody (PRA) 高値を呈した小児に対する心臓移植の経験

石垣 俊, 鳥越 史子, 田中 智彦, 髭野 亮太, 石井 良, 石田 秀和, 成田 淳, 小垣 滋豊, 大薗 恵一 (大阪大学 医学部 医学系研究科 小児科学)

キーワード:心移植, 抗体関連拒絶反応, Panel reactive antibody

【背景】心移植後拒絶反応の10-20%を占める抗体関連拒絶反応(AMR)は細胞性拒絶に比して発症頻度は低いが致死的な経過をたどりうる。今回、移植前よりPRA高値を認めAMRハイリスクと判断された小児に対する心臓移植を経験したので報告する。【症例】生後4ヵ月に拡張型心筋症と診断した女児。カテコラミン離脱が困難となり心臓移植待機登録後、生後7ヵ月にVAD装着。待機中のスクリーニング検査でPRA 高値(ClassI 74%, ClassII 88%)を認めた。2歳6ヵ月(待機661日目)心臓移植の際、ドナー抗体検査でもPRA Class I 0%,ClassII 48%と高く、術前からMMFを開始し、血漿交換およびサイモグロブリン投与にてPRA低下(ClassI 0%,ClassII 3%)を確認。明らかな拒絶を認めなかったが移植後4日目に再度PRA 高値(ClassI 0%,ClassII 94%)となり、ドナー特異的抗体陽性であった。術後1週目でも高値(ClassI 31%,ClassII 100%)のため血漿交換を施行。同日の心筋生検では、ISHLT分類Grade0であるが蛍光免疫染色にてC3d/C4d陽性、HLA抗体陽性を認め、pAMR1(I+)と診断されたため、リツキシマブを追加投与。しかしそれ以降も血行動態に問題なく急性拒絶反応も認めなかったため免疫抑制薬増量(プログラフ目標トラフ値12ng/ml)で経過観察。術後2・4週目でもPRA高値の持続はあるも拒絶反応はなく移植後49日目に退院。移植後半年の心筋生検にて補体陽性所見が目立たなくなりPRAも低下を確認することができた。【考察】わが国の小児心移植症例は少ないためAMRの知見は乏しい。今回、AMRハイリスク症例に対する積極的な免疫抑制療法が有効であった可能性はあるがその評価は難しい。またPRA高値の移植後患者は遠隔期の予後も悪いことが報告されており、本児においても今後の長期的な管理が重要である。