[P17-04] Reversed differential cyanosisを呈したTGA/VSDに対する動脈スイッチ手術症例
Keywords:Reversed differential cyanosis, TGA, 動脈スイッチ
背景:“reversed differential cyanosis”は、VSDを合併した大血管転位症でみられる現象で、下肢のSpO2が上肢より高く動脈管を介した右左シャントが原因である。著しい肺血管抵抗の上昇や、大動脈縮窄、右室流出路狭窄の合併が疑われ、これらを除外あるいは治療することが動脈スイッチ手術の成績向上に有用である。症例:在胎38週4日正常経膣分娩で出生、体重は3402g。出生後の心エコーでTGA、VSDと診断。チアノーゼの進行あり、日齢12にBASを施行。PDAは右左シャントで下肢のSpO2は上肢より常に2~5%高かった。大血管の位置関係は大動脈が右前、肺動脈が左後ろであり、大動脈と肺動脈の口径差はほとんどなく、冠動脈走行はShaher1型であった。VSDはperimembranous型欠損でinlet extensionを認め、サイズは10×11mmと大きかった。動脈スイッチとVSD閉鎖の適応であるが、reversed differential cyanosisを呈していることから、合併病変の検索を優先させた。臨床経過では徐々に肺血流増加所見が見られており、肺血管抵抗値はそれほど高くないと判断した。造影CTでは大動脈縮窄の合併なく、右室流出路の狭窄も認めなかった。心臓カテーテル検査の右室造影では、右室の血液が大動脈よりも、VSDを介して肺動脈により流れるように描出され、右室拡張末期容量は88%Nであった。初回手術として生後4週に正中切開で動脈管結紮と肺動脈絞扼術を施行した。動脈管結紮で下肢の血圧低下はみられなかった。3ヶ月後心臓カテーテル検査では、右室拡張末期容積は138%Nまで拡大しており、根治術を施行した。手術は右房から三尖弁越しのVSD閉鎖と、動脈スイッチを型の如く施行した。術後の経過は良好であった。結語:本症例では、VSDが通常より大きいことと右室容積が小さめであることがreversed differential cyanosisの原因と考えたが、この現象があれば合併病変の存在を除外しながら動脈スイッチ手術を行うことが重要であると考える。