[P19-01] Kearns-Sayre症候群と致死的不整脈の合併に関する考察:植込み型除細動器の必要性について
キーワード:Kearns-Sayre症候群, 致死的不整脈, ICD
【背景】Kearns-Sayre症候群(KSS)は、慢性進行性外眼筋麻痺、網膜色素変性、心伝導障害を3徴とするミトコンドリア異常症である。ガイドライン上、II度以上の房室ブロック(AVB)にペースメーカ植込み(PMI)が推奨されているが、植込み型除細動器(ICD)についての記載はない。当科で経験した致死的不整脈合併KSS例について報告し、類似症例について文献的考察を行う。【目的】KSSの致死的不整脈合併について考案する。【症例】症例は19歳女性。眼症状と完全AVB (CAVB)からKSSと診断され、2回の失神精査のため受診した。QTc 690msでtorsade de pointes(TdP)、心室頻拍、心室細動(VF)が出現し電気的除細動で停止した。硫酸Mgとメキシレチンの投与でQTcは短縮したが、30台の徐脈のため2次予防目的にICD植込みを施行した。意識は改善しリハビリ施行後に退院した。【考察】本症例を加えた不整脈合併KSS症例の報告は115例あり、CAVBは112例中51例(46%)、II度AVBは9例(8%)、TdPは80例中9例(11%)、VTは6例(8%)、VFは3例(4%)だった。PMIは109例中66例(60%)、致死的不整脈を合併した13例中ICD、CRT-D植込みは8例(62%)に行われ、PMIした66例中4例が突然死した。QTc時間はTdP例で628±91ms、非TdP例で470±28ms、補充収縮の心拍数は、TdP例で54±14bpm、非TdP例で39±12bpmであった。KSSの10%以上が致死的不整脈を発症し、その半数以上でICD植込みが行なわれた。PMI後の突然死の原因は致死的不整脈だった可能性が高く、KSSにはICD植込みが望ましいと考える。KSSのQT延長は徐脈が原因ではない可能性が高く、CAVBがなくともICDが必要となる症例もあると推測される。