[P21-05] 未修復のファロー四徴症と肝内門脈低形成を合併し、長期生存している成人男性の1例
キーワード:ファロー四徴症, 門脈低形成, 門脈体循環シャント
症例は21歳男性。日齢3に心雑音を指摘され、ファロー四徴症と診断。その後、新生児マススクリーニングで高ガラクトース血症を認めたことを契機に精査され、肝内門脈低形成・門脈体循環シャントを確認した。ファロー四徴症については他院で精査されたが、肝疾患の合併のために積極的な外科介入が困難と判断され、この時点で手術適応なしとされた。以後、対症療法として蛋白制限食とラクツロース、β遮断薬の内服、在宅酸素療法による管理を外来で継続した。肝胆道系マーカーや血中アンモニア値は高値で推移し、精神発達遅滞の合併を認めたため、学童期は特別支援学校に通学した。SpO2は60-90%台と体調により変動が大きく、在宅酸素を適宜使用した。成人を迎えるにあたり、現状の再評価を目的として心臓および肝臓周囲の精査を行う方針とした。心臓カテーテル検査では平均中心静脈圧≒2mmHg、肺動脈平均圧5~10mmHgと低値であった。肺動脈弁下には狭窄所見を認め、右室-主肺動脈間で最大70mmHgの圧較差を認めた。腹部血管造影において、腸間膜静脈から下大静脈-右房接合部付近へ流入する異常血管確認でき、腸管からの静脈血は大半が異常血管へ流れる所見が得られた。バルーン閉塞下の造影でも同様の所見であり、わずかな側副血行路が肝内に流入したが、門脈系は明らかに描出されなかった。異常血管の血圧はバルーン閉塞下でも平均6mmHgと比較的低値であった。他日に撮影した胸腹部造影CTでは、肝内に複数の限局性結節性過形成と考えられる腫瘤性病変を確認した。食道・腹部血管の静脈瘤は目立ったものを認めなかった。心臓・肝臓に対するこれ以上の積極的・侵襲的治療を家族が希望されず、現在の管理を継続する方針となった。今後、加齢やチアノーゼに伴う全身の臓器合併症が顕在化、あるいは増悪する可能性があり、慎重な観察と定期検査を要する。