第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

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ポスターセッション

会長賞選別

ポスターセッション22(P22)
会長賞選別セッション

2018年7月5日(木) 18:00 〜 19:00 ポスター会場 (311+312+313+315)

座長:赤木 禎治(岡山大学 循環器内科)

[P22-05] Mid-aortic syndromeに対する外科治療及び予後の検討

黄 義浩, 野村 耕司, 高木 智充, 川村 廉 (埼玉県立小児医療センター 心臓血管外科)

キーワード:Mid-aortic syndrome, 外科治療, 予後

【目的】Mid-aortic syndrome(MAS)は遠位胸部から腹部大動脈の区域狭窄を有し、主に小児期に発症する希な疾患である。未だ病因は不明確な点が多く、また無症候性の場合、外科治療介入や予後の判断に苦慮する疾患でもある。今回当院で手術を施行したMAS症例に対してその外科治療、予後につき検討を行った。【対象】症例は8例(男5、女3)、診断年齢は1ヶ月~13歳(平均6歳)、契機は高血圧(3)、心雑音(3)、心不全(2)、手術年齢2ヶ月~14歳(平均7歳)であった。血管病変が2cm以上に亘る5症例の内、横隔膜下まで及ぶものは2例、血管壁の脆弱性から胸腹部大動脈瘤(1)及びkinking Ao(1)の合併を認めた。他合併心疾患なし。【手術】全例左側開胸(第3~8肋間)とし、病変が横隔膜下までの症例にはそれぞれ胸骨正中切開、傍腹直筋切開を加えた。補助手段はTemporary bypass(3)、上下肢分離体外循環(1)、下肢体外循環(1)、単純遮断(3)。 血行再建はGraft replacement 3例(10mm,14mm,16mm)、Graft bypass 2例(共に12mm)、直接吻合2例、Patch plasty 1例。血管病理診断は5例に行い、全例炎症や瘢痕所見なく、3例に中膜弾性線維及び内膜肥厚、2例に中膜弾性線維欠乏及び低形成を認めた。【結果】術後観察期間は14±8年で死亡、合併症なし。大動脈圧較差(mmHg)は術後早期68±23→11±11と改善、中遠隔期も12±10と維持されていた。術直後圧較差20mmHg以上は直接吻合の1例に認めたが、1年以内に10mmHg未満となった。高血圧残存は3例で、内2例は運動反応性であった。径10mmの人工血管置換症例で術後7年から壁内血栓及び石灰化、Patch plasty症例で術後5年から血管変形を認め、現在外来経過観察中である。【結論】本検討ではMid-aortic syndromeに対する外科治療の早期予後は、術式や補助手段を問わず比較的良好であったが、主病因が先天的な血管中膜病変の可能性もあり、人工補填物の問題だけでなく中遠隔期の高血圧残存に注意が必要である。