第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

周産期・心疾患合併妊婦

ポスターセッション23(P23)
周産期・心疾患合併妊婦 2

2018年7月6日(金) 18:00 〜 19:00 ポスター会場 (311+312+313+315)

座長:上野 健太郎(鹿児島大学病院 小児診療センター)

[P23-04] 静脈管の拡大を示した臍帯静脈瘤の早産例

百木 恒太1, 星野 健司1, 菱谷 隆1, 河内 貞貴1, 大越 陽一1, 鈴木 詩央1, 石川 悟1, 中村 学2, 高橋 泰洋2, 山本 智子2, 小川 潔1 (1.埼玉県立小児医療センター 循環器科, 2.さいたま赤十字病院 産婦人科)

キーワード:臍帯静脈瘤, 静脈管, vascular resistance

【背景】胎児期の臍帯静脈瘤は臍帯静脈の稀な奇形であり、胎児の合併奇形や臍帯静脈の局所的な拡大に伴い血栓形成や子宮内死亡の原因となることが知られているが、静脈管の拡大を合併している報告はない。今回、静脈管の拡大を示し、高心拍出性心不全をきたした臍帯静脈瘤の早産症例を経験したため報告する。【症例】当院紹介時は在胎29週6日、主訴は右心系の拡大であった。胎児超音波検査にて、CTAR 43%と心拡大、三尖弁逆流(重度)、心嚢水、combined cardiac output 816ml/kg/minと高心拍出性心不全を認めた。また特徴的な所見として、腹部内外の臍帯静脈が13.5mmと著明な拡大を認め、拡大した臍帯静脈が正常な静脈管を形成せずに拡大したまま通常経路で右房直下の下大静脈へ流入していた。出生後に胎盤経由の血流が途絶されるため高心拍出性心不全の病態の改善が見込まれたが、早産による児の未熟性と胎児心不全徴候の増悪を天秤にかけながら密に児のフォローを行い、在胎32週2日、CTAR 58.5%の時点で選択的帝王切開を行った。出生後は一時的にpreload減少による心機能低下に対してカテコラミンサポートを要したものの、数日間で心機能は改善した。また通常では静脈管の存在する部位は開存したままで、門脈体循環短絡を認めていた。【考察】臍帯静脈瘤は通常は局所的な臍帯静脈の拡大を示すが、本症例では広範囲に静脈管の拡大を認め、また静脈管の拡大も合併していた。静脈管の機能としては、vascular resistanceを形成し、静脈管径を変化させることでintrahepatic shuntとの胎盤経由で心臓へ還流する血流の分布を調整する。静脈管拡大が臍帯静脈の血流量増加をきたす報告例もあり、本症例では静脈管拡大により全体的な臍帯静脈の拡大と高心拍出性心不全をきたしたと考えた。【結語】高心拍出性心不全を呈し、臍帯静脈拡大が局所的ではなく広範囲に認めている場合、静脈管の拡大を確認する必要が有る。