第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

ポスターセッション27(P27)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 2

2018年7月6日(金) 18:00 〜 19:00 ポスター会場 (311+312+313+315)

座長:上野 倫彦(日鋼記念病院 小児科)

[P27-02] 当院で経験した慢性肺疾患に合併した肺高血圧症11例の検討

阿久津 裕子, 松村 雄, 中村 蓉子, 渡邉 友博, 渡部 誠一 (土浦協同病院 小児科)

キーワード:肺高血圧症, 慢性肺疾患, 在宅酸素療法

【背景】慢性肺疾患(CLD)児の約4分の1に肺高血圧症(PH)を合併することが知られている。リスクファクターに超・極低出生体重児、短い在胎週数があげられ、極早期産児でなくても子宮内発育遅延を認めた児にはPHが合併しやすいとの報告がある。重症例では肺血管拡張薬が用いられることもあるが、定まった治療法は確立されておらず、特に中等症以下の症例での治療介入に関しては議論の別れるところである。
【方法】2006年1月~2017年12月までおよそ12年間での当院における診療経験を後方視的に検討した。受胎後36週での酸素投与継続例をCLDと規定した。CLDのうち経過中に心臓超音波検査で心室形態や弁逆流、肺動脈波形パターンなどを元に肺高血圧症と診断した症例をCLD-PHとした。また肺体血圧比7割以上のPHを重症PHと定義した。
【結果】超低出生体重児は213例、極低出生体重児は346例、低出生体重児1787例だった。CLDは33例(平均在胎週数27.6週、出生体重934.7g、超低出生体重児28例、極低出生体重児3例、低出生体重児2例)、CLD-PHは11例(平均在胎週数26.1週、出生体重816.2g、超低出生体重児9例、極低出生体重児2例)だった。在宅酸素療法(HOT)導入例は計16例だった。
CLD-PHの内HOT導入例は9例(82%)あり、残りの2例は退院前に酸素投与を終了した。また重症PH2例(現在HOT継続例と死亡例)を除いた78%がPHの改善に伴いHOTを離脱出来た。HOT離脱までの期間は非PH症例で平均9.4か月だったのに対し、CLD-PHでは平均13.8か月と長期化する傾向があった。CLD-PHのうち3例でシルデナフィル投与を行なったが、1例は体血圧低下に伴い中止した。
【考察】過去の報告通り、短い在胎週数・出生体重低値が CLDにおけるPH合併のリスクファクターであることが示唆された 。一方で中等症以下のPH合併例では、肺血管拡張薬を要することなくHOTのみで経過観察可能な症例が多いと推察した。CLDの改善に伴いPHも改善する可能性があると考えられた。