[P27-03] 肺高血圧症, 腎不全を契機に診断された脚気心の1例
キーワード:Vitamin B1, 肺高血圧症, 鉄欠乏性貧血
【緒言】脚気とはVitamin B1 (Vit. B1) 欠乏症による代謝疾患であり, 血行動態として高心拍出性心不全が一般的であるが, 時に肺高血圧を伴うことが知られている. 【症例】2歳男児. 入院2日前からの発熱, 水分摂取不良, 乏尿を主訴に入院した.入院時に体重減少, 多呼吸, 聴診で2音肺動脈成分の亢進を認めたが心雑音は聴取しなかった. 血液検査で小球性低色素性貧血, 腎機能障害, BNPの上昇を認めた. エコーで左室の過収縮 (EF 90%)を認め, 心室中隔は収縮末期に左室側に圧排され, 中等度の三尖弁逆流 (flow V. 3.75 m/s)を認めた.心腎症候群の病態によるうっ血性腎不全およびそれに伴う右心不全・肺高血圧症と考え, 輸液, 利尿薬投与により症状はやや軽快した. この時点で施行した心臓カテーテル検査では平均主肺動脈圧の軽度上昇 (25 mmHg)を認め, また心係数の上昇 (5.9 L/min/m2), 左室拡張末期圧の軽度上昇 (13 mmHg)を認めた. 入院時の問診から, 児はこだわりが強く極端な偏食があることが判明し, 貧血と栄養状態を改善したところ, エコー上肺高血圧はさらに改善した. また血清Vit B1濃度低値 (8 ng/ml; 正常>20 ng/ml)を確認した後Vit B1の補充を開始した. その後エコー上肺高血圧は正常上限(心室中隔は正円, 三尖弁逆流軽度, flow V. 2.80 m/s)まで改善し, 入院19日目に退院した. 現在外来フォロ-中であるが, 貧血改善以降経口摂取量も増加し肺高血圧症の再増悪なく経過している.【考察】本症例は血液検査でVit. B1低値を確認し, その他肺高血圧症を来す疾患は認めなかったため, 偏食が原因のVit. B1欠乏症による脚気心とそれに伴う肺高血圧症と診断し, 現在Vit. B1を補充している. 脚気心は栄養状態の向上に伴い, 我が国では患者数が激減したが, 近年でも発達障害による偏食やイオン飲料の大量摂取などによる報告が散見される. 肺高血圧症および腎不全合併症例の鑑別診断として考慮すべき疾患と考えた.