[P28-03] 胎児期に診断された左側相同症の検討
Keywords:左側相同症, 胎児診断, 完全房室ブロック
【背景】左側相同症の合併心奇形は、右側相同症より軽症だが、房室中隔欠損(AVSD)、完全房室ブロック(CAVB)を合併した症例は、胎児期に診断される先天性心疾患のなかで最重症に分類される。【方法】当院で胎児診断し、出生した左側相同症9例について検討した。【結果】下大静脈欠損を全例認め、合併心奇形はなしが1例、心室中隔欠損1例、肺動脈狭窄(PS)/AVSD7例であった。胎児期の房室弁逆流は、軽度以下5例、中等度2例、高度1例で、高度の1例は新生児期に房室弁形成術を要したが、救命可能であった。徐脈性不整脈の合併を4例に認め、全例AVSD/PSで、洞不全症候群(SSS)1例、CAVB3例であった。SSS症例は胎児心拍数(FHR)が90bpm台で、悪化はなかった。CAVB症例1は31週時にCAVB(FHRは75-85bpm)になったが、胎児水腫徴候はなく、37週で出生し、生後2か月、ペースメーカー植え込み術(PMI)を行った。症例2は30週にCAVB(FHRは65-75bpm)、 症例3は28週でCAVB (FHRは50bpm台)と診断され、いずれも33週に胎児水腫となり、娩出後、それぞれ生後2日、0日で一時的PMI(心外膜電極)を行ったが、生後4か月、2か月で死亡した。症例3の剖検所見で心筋緻密化障害(NC)を認め、心エコー所見を再検討した。症例1は、NC所見はなく、症例2は30週より、症例3は、28週より確認された。左室壁にNC所見を認めた症例はこの2例のみであった。【考察】左側相同症に合併するNCは、家族例の報告が1件あるが、症例の多くは、AVSD/PS、CAVBを合併し、とくにCAVBの合併例は、胎児水腫、周産期死亡に至ることが多い。胎児期の異常な血行動態が、NC発症に関与している可能性がある。【結論】胎児期に診断された左側相同症の合併心奇形は、AVSD/PSが多い。CAVBを合併した胎児水腫症例は、予後不良である。今回の検討では、胎児水腫症例に、いずれもNC所見が見られた。房室弁逆流は、手術介入により救命できる可能性がある。