The 54th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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ポスターセッション

染色体異常・遺伝子異常

ポスターセッション29(P29)
染色体異常・遺伝子異常 2

Fri. Jul 6, 2018 6:00 PM - 7:00 PM ポスター会場 (311+312+313+315)

座長:田村 真通(秋田赤十字病院 小児科)

[P29-03] RIT1遺伝子変異を認めたNoonan症候群の1例

川口 直樹1, 宗内 淳1, 白水 優光1, 飯田 千晶1, 岡田 清吾1, 長友 雄作2, 杉谷 雄一郎1, 渡邉 まみ江1 (1.九州病院 小児科, 2.九州大学病院 小児科)

Keywords:Noonan症候群, RIT1遺伝子, 肥大型心筋症

【背景】Noonan症候群は特徴的顔貌や低身長、精神発達遅滞や心奇形を特徴とし、細胞の増殖・分化・アポトーシスを制御するRAS-MAPKシグナル伝達の異常が原因であるとされる。いくつかの病因遺伝子変異が同定されており、表現型との関連性の解明が進んでいる。【症例】1か月女児。胎児期に羊水過多があり、在胎37週、体重3690gで出生した。臨床所見として低身長(-1.7SD)、特徴的顔貌(粗な毛髪、眼瞼下垂、眼裂斜下、耳介低位など)、心雑音を認めた。心電図で右側胸部誘導の深いS波を認め、心エコーで肺動脈弁狭窄(PS)があり(PS-PG 64mmHg)、左室心筋のびまん性肥厚から肥大型心筋症(HCM)と診断した。遷延する難治性の乳び腹水に対して長期ドレナージを行った。重症PS(右室圧>70mmHg)に対してβ遮断薬を開始し、生後1か月、16か月に経皮的バルーン治療を実施したが右室圧は改善せず、2歳時にはPS-PG 122mmHgまで増悪した。HCMに有効とされるシベンゾリンの内服を開始し、3歳時には左室心筋肥厚の軽減とPSの改善(PS-PG 85mmHg)を認めた。また1か月時にFDP 44.5μg/mL、D-dimer 19.1μg/mLと無症候性の凝固障害を認めたが、約6か月で正常化した。特徴的な臨床経過からNoonan症候群と診断し、遺伝子検査で近年同定されたRIT1遺伝子変異と診断した。DQ 70程度の発達遅滞はあるが、現在3歳3か月で外来経過観察中である。【考察】RAS/MAPKシグナル伝達系に関わる遺伝子異常としてPTPN11RAF1SOS1RIT1などが同定されており、それぞれの表現型は差異を有している。RIT1遺伝子変異の特徴として、周産期の羊水過多や胎児水腫が多く、乳び胸などのリンパ系の異常があり、PSとHCMの両方を合併し、発達遅滞は軽症であるとされ、本症例の表現型はそれらに一致するものであった。シベンゾリン内服によりPSとHCMは改善傾向であり、今後長期的な効果を判断していく。