[P30-04] 血栓を伴う動脈管閉鎖を認めたが側副血行路により救命し得た大動脈弓離断症の1例
キーワード:大動脈弓離断症, 動脈管血栓, 側副血行路
【背景】大動脈弓離断症(IAA)は動脈管閉鎖に伴い急激にshockに陥る症例を経験する。今回、血栓を伴い動脈管の閉鎖を来したが、側副血行路の発達によりshockに陥らずに外科治療に至ったIAAの1例を経験したので報告する。【症例】日齢4男児。在胎38周5日、体重2844gで出生。前医にて日齢2に心雑音と乏尿を認め、心エコーにてIAAの診断。Ductal shockに陥ったが PGE1-CDを開始し200ng/kg/minまで増量、動脈管の開存を認めshockから離脱した。日齢4に加療目的にて当院に転院となった。転院時の上肢 88/40 mmHg 下肢 50/37mmHg, SpO2の上下肢差はなく、心エコーではIAA Type A, VSD, 血栓と推測される高輝度の塊により動脈管が高度狭窄を呈していた。持続投与に加えPGE1-CDの急速静注を繰り返したが動脈管は閉鎖、その後下行大動脈に流入する側副血行路の血流が顕著となり循環動態は維持され、日齢6の大動脈形成術、心室中隔欠損症パッチ閉鎖術を施行。手術所見では動脈管の器質的な閉塞とともに血栓塞栓の所見を認めた。術後経過は良好で術後2日に抜管、術後15日に前医に転院となった。【考案・まとめ】日齢2の発症時にはductal shockを認めたが、日齢4の動脈管閉鎖時には側副血行路の発育を認め、shockに至らずに外科治療が可能となった。側副血管の急速な発育の機序は不明であるが、存在していた側副血管が動脈管の閉鎖に伴い下行大動脈内の血圧が下がり、側副血管の血流が流入しやすくなると推測する報告がある。一方、転院時より心エコーでは動脈管血栓の所見を認めたが、経過と手術所見により1回目のductal shock時に器質的な動脈管閉鎖とともに血栓の形成、その後PGE1-CDの投与により開存したが血栓の増悪と共に再度動脈管の閉鎖に至ったと推測された。