[P31-04] 心内修復術後に血球貪食症候群の急性増悪を認めた完全型房室中隔欠損症の一例
Keywords:完全型房室中隔欠損症, 血球貪食症候群, ECMO
【背景】血球貪食症候群(HLH)はマクロファージの異常活性化, 高サイトカイン血症を主体とする病態である. 生後2か月時に発症したHLHの既往をもつ完全型房室中隔欠損症の生後8か月女児について, 心内修復術後にHLHの急性増悪を来した症例を経験したので報告する. 【症例】当院で胎児診断され, 在胎38週で出生, 日齢14で肺動脈絞扼術を実施. 生後2か月時に発熱を契機にHLHを発症, プレドニゾロン(PSL), シクロスポリン(CyA)を投与され寛解した. その後徐々にチアノーゼが進行したため生後7か月時に心臓カテーテル検査を行い, LVEDV 162%正常値, 肺血管抵抗値 5.91U・m2との結果を得た. 術前に小児血液専門医に相談の上, 生後8か月時に心内修復術を実施した. 術後は肺高血圧に対し一酸化窒素療法, O2投与, 肺血管拡張薬内服で治療した. 術後17日目からLDH, フェリチンの上昇を認めHLH再発を疑い, デキサメタゾンを開始した. 術後27日目からCyAを追加したが高サイトカイン血症に伴う急激な血管透過性亢進からショック・徐脈となり, V-A ECMO装着となった. この間に交換輸血・CHDFなどの支持療法, HLHに対するデキサメタゾン, CyA投与を行い, 14日後にECMOから離脱し得た. HLHの病勢はいったん安定したが術後59日目より感染を契機に再増悪, 翌日に再びショックとなり死亡した. 【考察】本症例は初発月齢やNK細胞活性低下から家族性血球貪食性リンパ組織球症(FHL)を疑った. FHLは低年齢での発症が多く予後不良の疾患である. HLHに対するV-A ECMOの使用は高サイトカイン血症を助長した可能性があるが, 循環不全に対するbridging therapyとしては有効であった可能性があると考えた.