[P32-02] 左室内巨大血栓を認めたDuchenne型筋ジストロフィー症の1例
キーワード:巨大血栓, 心房粗動, Duchenne型筋ジストロフィー症
【はじめに】Duchenne型筋ジストロフィー症(DMD)は、高率に合併する心筋障害による不整脈や心不全が主な死因となっているが、若年成人の血栓・塞栓症の報告も重大な合併症として散見される。今回我々は、拡張型心筋症(DCM)に心房粗動(AFL)が常態化後、左室内巨大血栓を合併したDMDの1成人例を経験したので報告する。【症例】症例は34歳、男性。15歳で気管切開及び在宅人工呼吸管理となり、21歳でDCMとなった。32歳から利尿をトルバブタンに依存する心不全状態となったが、エナラプリルやカルベジロールを開始後トルバブタンから離脱し得た。33歳時に動悸を訴えるようになり、Holter心電図上様々な房室伝導比を伴うAFLを認め、主に2:1伝導の際に動悸を自覚していた。その後AFLが常態化し動悸の頻度が増加したため、カテーテルアブレーションを勧めて不整脈治療専門施設に紹介。しかし、心エコー上左室心尖部に16×21mm大の動揺する血栓を認めてRFCAは中止となった。直ちにワーファリンを開始し、約2か月後には心エコー上血栓は消失した。現在PT-INR1.5-2.0程度に維持しつつワーファリンを継続中で、血栓の再発や塞栓症の発生はない。【考察】左室内巨大血栓を合併した要因として、極端に低いADLに加えて(1)DMDは潜在的に凝固・線溶系が亢進している報告があること、(2)DCM状態によ心腔内血流うっ滞及び心不全に対する水分制限や利尿剤による脱水傾向、(3)常態化したAFLがDCMの血流うっ滞を助長していた可能性が挙げられる。【結語】DMDでは常に易血栓性状態にあるとの認識のもと、凝固・線溶系の定期的なモニタリングと血栓の早期発見に留意し、抗凝固療法の開始について積極的に検討する姿勢が必要である。