第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

外科治療

ポスターセッション38(P38)
外科治療 4

2018年7月6日(金) 18:00 〜 19:00 ポスター会場 (311+312+313+315)

座長:小澤 司(東邦大学医療センター 大森病院循環器センター心臓血管外科)

[P38-05] 新生児期に挿入したペーシングリードにより心絞扼をきたした一例

宮城 ちひろ1, 落合 由恵1, 瀧川 友哉1, 安東 勇介1, 馬場 啓徳1, 久原 学1, 徳永 滋彦1, 塩瀬 明2 (1.九州病院 心臓血管外科, 2.九州大学病院 心臓血管外科)

キーワード:心絞扼, ペースメーカーリード, 先天性房室ブロック

【症例】8歳男児.在胎26週に胎児房室ブロックと診断され,37週5日,2744gで出生.出生後HR50の除脈と心不全症状を認めたため日齢6に胸骨尾側縦切開で永久ペースメーカー挿入術 (VVI) を施行された.以後ペースメーカートラブルなく経過し,5歳時にバッテリー交換を施行していた.動脈管残存あったため,経皮的動脈管閉鎖術施行目的で入院した際の心エコー,胸部エックス線写真で心室リードが房室間溝を通って心筋に巻き付いていることに気づかれ,胸部エックス線の側面像やCT評価で心絞扼の診断となった.心室リードが主肺動脈根本左側より後方を房室間溝に沿い,下大静脈の左側に出てきており,肺動脈弁上狭窄 (PG33mmHg) と僧帽弁狭窄 (1.8m/s) をきたしていた.左冠動脈を上方より,心室リードで圧迫していたが,CT上明らかな冠動脈狭窄は認めなかった.準緊急手術で心室リード交換と,ペースメーカーのDDDへのグレードアップを行う方針とした.【術中所見】再度胸骨正中切開でアプローチした.2本の心室リードは主肺動脈の根本に巻き付くように背側へ走行し,左冠動脈主幹部の上を通って房室間溝を背側から回るようにして下大静脈の左側から前面に出てきて腹部の本体側へと通じていた.リードを切断し,剥離を進めて人工心肺は使用せずにリードを心筋から剥離できた.リードを除去すると主肺動脈の狭窄と僧帽弁狭窄は解除された.新規の心外膜リードを右心房,右心室に装着し,本体をDDDにアップグレードした.術後経過は問題なく,現在元気に外来通院中である.【結語】新生児期に挿入したペースメーカーリードによる心絞扼は,まれではあるが世界で10例前後の報告があり,突然死の原因となるとされている.本症例を通じてリードによる心絞扼の予防や早期発見のための対策等について文献的考察を交えて報告する.