[P39-04] 複数回の開胸手術および血管内治療を施行したLoeys-Dietz症候群の1例
Keywords:Loeys Dietz syndrome, 人工血管置換術, 胸部ステントグラフト内挿術
【背景】Loeys-Dietz症候群はMarfan症候群と類似した臨床所見を呈する結合織疾患であるが,より若年で大動脈瘤や大動脈解離を発症することが特徴である.また,複数回の大動脈手術を必要とするとされ,再手術を考慮した手術戦略と術後の慎重な経過観察が重要である.再手術においては血管内治療(ステントグラフト内挿術)も考慮されるが,結合織疾患に対する有用性は未だ明らかにされていない.今回われわれは複数回の開胸手術および血管内治療を施行したLoeys-Dietz症候群の1例を経験したので文献的考察を踏まえ報告する.【症例】17歳女性.7歳時,大動脈弁輪拡張症,上行大動脈瘤64mmに対してFreestyle弁19mmによる大動脈基部置換術+上行大動脈置換術(Hemashield20mm)を施行された.11歳時,TGFBR1変異が同定され,Loeys-Dietz症候群と確定診断された.14歳時,弓部大動脈瘤70mmに対して腕頭,左総頸動脈を再建した部分弓部置換術(J graft20mm4分枝)を施行された.17歳時,急性大動脈解離(Stanford B, DeBakey 3B,偽腔開存,真腔狭小)を発症し,約1ヶ月の保存加療中に急速な下行大動脈拡大(20→36mm)を認めた.右肺癌を示唆する多発肺結節影を認め,人工心肺使用による癌の急速進行を危惧し,結合織疾患ではあるが左鎖骨下動脈起始部を閉鎖した胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)を選択した.中枢のentry閉鎖は得られたが,ステント末梢側からの再解離により下行大動脈拡大50mmを認め,約3週間後に追加TEVARを施行した.腹部大動脈リエントリーからの偽腔血流は残存したが,再解離部からの偽腔血流は制御し得た.対麻痺を認めず,最終手術から1年,大動脈拡大なく,右肺多発結節病変の増大も認めていない.【結語】TEVARを含め4回の大動脈手術を施行したLoeys Dietz症候群の1例を経験した.大動脈壁の脆弱性を認識すると共に再手術を考慮した手術戦略が重要と考えられた.