[P41-05] WPW症候群に対するアブレーション術後ATP急速静注による再伝導の誘発
Keywords:WPW症候群, ATP, 再発率
【背景】心房細動に対する肺静脈隔離術後、ATP(アデノシン三リン酸)を投与することで一部の症例に再伝導(dormant conduction)を認め、追加治療を行うことで成功率が上昇するとされている。今回、自施設でATPを投与することで再伝導が誘発されたWPW症候群症例を経験したため報告する。【対象】喘息既往例を除いたWPW症候群患者53例のうち、顕性WPW 40症例(A群)を対象とした。【方法】アブレーション治療成功後30分を経過してからATP (0.3-0.4mg/kg)を急速静注した。Δ波を認めた症例に対して最終成功通電部位を再焼灼した。再度ATPを投与してΔ波を認めないことを確認して治療終了とした。外来にて術後1ヵ月後、6ヵ月後の心電図検査を行い、Δ波の再発の有無を調べた。対象群として、以前当院で施行した顕性WPW症候群の非ATP投与群(B群)を用いて比較検討した。【結果】全症例で治療に成功したが、3症例に再伝導を認めた。術後1ヵ月時の再発率はA群で1/37(2.7%)、B群は3/56(5.4%)であった。また、術後6ヵ月時の再発率はA群で2/21(9.5%)、B群では4/49(8.2%)であった。再発率は、術後1か月と6か月では統計学的有意差は認められない結果となった。【考察】A群の再発2症例と、B群の再発4例中2例は治療前にbumpした部位を焼灼、治療したものであった。つまり、bumpした場合、ATP投与は治療成功率の向上に寄与しないものと考えられた。しかし、bump例を除外すると、A群は再発0例に対しB群は2例(4.2%)認めることから、ATP投与による再伝導の確認、再焼灼は再発率を低下させるものと考えられた。また、再伝導を認めた3症例のうち2症例の副伝導路の位置は冠静脈洞入口部であり、治療困難例で有効であると考えられた。【結論】WPW症候群術後ATPを投与することによってdormant conductionの有無を確認することによって再発率を低下させ、治療困難例に対しても有効である可能性が示唆された。