[P43-01] 高齢期に三尖弁置換手術を行った修正大血管転位症の一例
Keywords:修正大血管転位症, 三尖弁閉鎖不全症, 高齢者
【背景】成人期の修正大血管転位症では体心室である右室機能や三尖弁逆流への対応が課題の一つであり、高齢期以降であってもその課題は継続する。【症例】症例は69歳女性。出生後に修正大血管転位症・心房中隔欠損症(ASD)・左上大静脈遺残と診断された。42歳時に肺動脈弁下左室に付随する僧帽弁前尖交連部に付着する小指頭大の構造物が左室流出路狭窄を引き起こしていると判断され、僧帽弁置換(機械弁)+ASD閉鎖術が施行された。51歳時に機械弁の血栓弁による心原性ショックで緊急僧帽弁再置換(生体弁)が行われた。その後は先天性心疾患を専門としない近医でフォローされていた。60歳以降は心房細動が永続化した。2017年8月より歩行時の息切れが出現。同年10月には心不全の急性増悪で他院へ緊急入院となった。急性期治療後も病棟内歩行で強い息切れを自覚し、自宅退院が困難のため当院へ転院となった。身体所見では3音と胸骨左縁にLevine 4/6の収縮期逆流性雑音を聴取した。経胸壁/食道心エコー図では、腱索断裂に伴う三尖弁前尖の逸脱と高度逆流(PISA radius=13mm、有効逆流弁口面積=0.82cm2、逆流率=73%)を認めた。右室造影でもSeller’s 4度の三尖弁逆流を認めた。右室駆出分画は60%と維持されていた。加えて左冠動脈と右房間に冠動静脈瘻(3.6mm)の合併を認めた。体液過剰是正後にも労作時の息切れは改善せず、内科的治療のみでは心不全管理が困難な状況であった。そこで三尖弁置換(生体弁)+僧帽弁再々置換(生体弁)+冠動静脈瘻閉鎖術を行った。弁の病理診断では粘液腫状変性を認めた。術後は軽度の右室機能低下を認めたが、自覚症状は改善し自宅退院が可能となった。【結語】成人先天性心疾患患者では高齢となっても治療介入を要することがあるため、生涯にわたる専門施設でのフォローアップが望ましい。