[P43-05] 重症心不全を呈した成人cTGAに対して弁尖温存TVRを施行した一例
キーワード:修正第血管転移, 成人, 三尖弁置換術
【はじめに】成人期における修正大血管転位は、診断時に重度の低心機能・房室弁逆流を呈している場合がある。特に術前低心機能(EF<40%)場合、房室弁逆流に対する外科的介入において、術後の生命予後が有意に悪いことが報告されている。一方で、どの程度の低心機能であれば耐術可能かは明らかではない。今回、術前にカテコラミン依存となった症例に対して、三尖弁(体循環房室弁)置換術を施行し、術後良好な経過を得た症例を経験したので報告する。【症例】70歳女性。これまで心疾患を指摘されたことはない。呼吸困難を中心とした心不全を発しし、カテコラミン離脱が困難な状態となった(DOA/DOB 2/2μg/kg/min)。心精査の結果、修正大血管転位およびそれに伴う体心室の重症房室弁逆流と低心機能(EF25%)を認めた。術前より筋力トレーニング及び歩行練習を積極的に介入した(peakVO2 9.9ml/kg/min)。手術は三尖弁置換術(ON-X 25mm)と機能的左室心外膜リード留置を行った。三尖弁は高度に肥厚し、前尖が心室側に落ち込んでおり、弁形成術は困難であった。心機能を考慮し、三尖弁は弁尖・腱索は温存した。術当日に抜管することができ、翌日より心臓リハビリテーションを開始した。少量カテコラミンの長期補助が必要であったが、術後約6週間で500m歩行が可能となり自宅退院となった。 【考察・結語】本症例はEF 25%と低心機能であったが、弁置換術を行い、良好な転機を得ることができた。術前より積極的な心臓リハビリテーションを行なった。術式は、1)確実な弁逆流の制御、2)手術時間の短縮を考慮し、弁置換術を選択した。心機能を考慮し、Tricuspid complex(弁尖・腱索、乳頭筋)は温存し、術後CRTが導入できるように心外膜リードを留置した。本症例は、高齢者・重度低心機能症例においても外科的介入によって、生命予後・QOLが改善しうる可能性を示した。