第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

心血管発生・基礎研究

ポスターセッション45(P45)
心血管発生・基礎研究 2

2018年7月7日(土) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (311+312+313+315)

座長:古道 一樹(慶應義塾大学医学部 小児科学 )

[P45-02] 乳児特発性僧帽弁腱索断裂の病態解明のためのウイルスゲノム解析および発現遺伝子の網羅的解析の試み

白石 公1,2, 白井 学3, 黒嵜 健一2, 三宅 啓2, 藤本 一途2, 北野 正尚2, 坂口 平馬2, 帆足 孝也4, 市川 肇4 (1.国立循環器病研究センター 教育推進部, 2.国立循環器病研究センター 小児循環器部, 3.国立循環器病研究センター 創薬オミックス解析センター, 4.国立循環器病研究センター 小児心臓外科)

キーワード:乳児僧帽弁腱索断裂, 網羅的解析, 次世代シークエンサー

[目的および背景]乳児特発性僧帽弁腱索断裂とは、生来健全な生後4-6か月の乳児に突然の僧帽弁腱索断裂による急性呼吸循環不全が発症し、迅速な診断と適切な外科治療が行われないと、患者の生涯にわたる大きな障害を残す可能性のある重篤な疾患である。腱索断裂のメカニズムとして、ウイルス感染、川崎病回復期、母親由来の抗SSA抗体、僧帽弁の粘液様変性などが引き金となることが示唆されているが、現在のところ詳細は明らかでない。本疾患の病因と病態を明らかにする目的で、患者の僧帽弁組織から試験的にウイルスゲノムおよび発現遺伝子を次世代シークエンサーを用いて網羅的に解析した。[対象と方法]施設の倫理委員会の承認および患者代諾者の同意のもと、腱索断裂乳児1例のPaxGeneによる固定標本から、大阪大学微生物病研究所の協力によりウイルスのメタゲノム解析を行った。また同様に、腱索断裂乳児4例と対象とした先天性心疾患2例の僧帽弁ホルマリン固定パラフィン切片(FFPE)からRNAを抽出を試み、腱索断裂組織のRNAトランスクリプトーム解析を行った。[結果]腱索断裂症例からのメタゲノム解析では、本疾患の病因と確確定できるウイルスや微生物のゲノムは検出されなかった。また6症例のFFPE腱索組織のトランスクリプトーム解析では、RNAの変性のため安定したサンプルが得られずせず、本疾患に特徴的な発現遺伝子のパターンは得られなかった。[結論]メタゲノム解析およびFFPEからのRNAトランスクリプトーム解析は、本来原因不明の希少疾患の病因および病態解析には有力な手段であるが、今回の検討では、抽出したRNAの変性と不安定さから病態を示唆する所見は得られなかった。今後さらに症例数を重ねることにより、また一方で新鮮標本を用いることにより、有力な結果が導かれるように努力したい。