[P46-03] 下大静脈絞扼を用いたプレコンディショニング戦略は大動物フォンタンモデル作成時の急激な循環変動を抑制する
キーワード:プレコンディショニング, フォンタン, 動物モデル
【目的】フォンタン循環動物モデルを作成するため、下大静脈絞扼を用いたプレコンディショニングの効果を検証する。【方法】Yorkshire pig (20~23 kg)に対して、1期的フォンタン術(TCPC群, n=5)または下大静脈-主肺動脈吻合術(IVC-Glenn群, n=5)を行った。また、プレコンディショニング(PC)として、それぞれの術式施行1週間前に下大静脈絞扼を行い、2期的に手術を行った(PC-TCPC群, n=5 またはPC-IVC-Glenn群, n=5)。全4群で、採血および術後の循環動態・生存期間を比較した。【結果】PC直後に下大静脈圧および心拍数の上昇(P<0.01, respectively)、収縮期・拡張期血圧および左室容量の減少を認めた(P<0.01, respectively)。1週間後には少量の腹水貯留および血中総蛋白・アルブミンの低下が見られたが、肝逸脱酵素の上昇は認めなかった。さらに、肝組織免疫染色ではHeat shock protein 70の発現上昇が見られた。一方、TCPC群・IVC-Glenn群ともPCの有無に関わらず、術後の下大静脈圧は上昇し心拍出量は減少した(P<0.01, respectively)。また、術後生存期間はTCPC群、PC-TCPC群およびIVC-Glenn群は抜管後1~24時間で全て死亡したが、PC-IVC-Glenn群は平均5日生存した(IVC-Glenn vs. PC-IVC-Glenn群, log-rank P<0.01)。なお、TCPC群またはIVC-Glenn群に比べ、PC-TCPC群およびPC-IVC-Glenn群では、抜管直後の血圧が有意に高値であった(TCPC群: 49.1±7.8 mmHg vs. PC-TCPC群: 62.8±5.9mmHg, P<0.01, IVC-Glenn群: 50.8±6.6 mmHg vs. PC-IVC-Glenn群: 72.0±7.1mmHg, P<0.01 )。【結論】IVC-Glennでは、1週間前に下大静脈絞扼によるプレコンディショニングを行うことで、急激な血行動態の変化を緩衝し循環不全による急性期死亡を抑制できたが、フォンタン手術では血圧保持効果は得られたものの延命はできなかった。機序解明を含めた更なる検討が必要である。