[P48-04] フォンタン術後蛋白漏出性胃腸症および鋳型気管支炎を発症した典型的左心低形成症候群の一例
キーワード:protein losing enteropathy, plastic bronchitis, HLHS
【背景・目的】TCPC術後症例では高い中心静脈圧に伴ううっ血やリンパうっ滞による重篤な合併症として蛋白漏出性胃腸症(PLE)及び鋳型気管支炎(PB)がある。今回PLEとPBを発症したが、非ステロイド性治療で5年以上生存しているTCPC術後症例を経験したので報告する。【症例】11歳、男児。胎児期に左心低形成症候群(HLHS)と診断され妊娠35週に近医産婦人科に母体搬送後、39週3日3452gで出生。生後当院NICUに搬送されUCGでHLHS (MS,AS)と診断。9生日Norwood(BT)術、4か月:両方向性グレン術、3歳4か月:TCPC (EC16mm)術を行った。術後、抗凝固・抗血小板・心筋保護薬と術後1年時の胸水貯留に対する加療後よりエンドセリン受容体拮抗薬と利尿薬の内服治療を行っていたが、術後2年頃PLEを発症した。発症時、低アルブミン(Alb)血症(1.7g/dL)と99mTc-HSAシンチグラムで腸管への集積像を認め確定診断した。入院しヘパリン(hep)静注治療後,徐々に総蛋白(TP)、Albの上昇を認めhep中止後もPLEの再発なく退院したが、退院6か月後再発した。この時は1日1回のhep・Ca皮下注射でTP/Albの上昇を認め、注射手技を母に習得済みであったため入院せず外来で継続できた。外来フォロー中PLE発症1年後に自宅で咳嗽発作後気管支鋳型の排出を認めPBも確定した。さらにPLE発症4年後より高容量の抗アルドステロン(AL)薬に利尿薬を変更し入院せずに外来フォローを継続できた。【考察】2014年JACCにMayo Clinicからフォンタン術後でPLE発症後の5年生存率は88%と報告されたが、2015年に当院より本学会に報告した成績も同じであった。PLE発症後の生存率は以前に比べ改善を認めてきたが、本例はPLEにPBを合併し生命予後はさらに厳しいものがあったと考える。しかし、治療当初よりhep療法が奏功し、1日1回の皮下注射法で効果の継続が行えたこと、さらに併用した高容量のAL薬も奏功したと考えられ、副作用の出現頻度の高いステロイド療法を回避できたことも相まって外来管理、結果的に延命できたと思われた。