[P50-03] 門脈体循環シャント結紮術不適応となった先天性門脈低形成症例の検討
Keywords:門脈体循環シャント, 肺高血圧, 血管造影
【緒言】先天性門脈体循環シャント(CPSS)は門脈低形成症例に合併するが、シャント結紮可能か否かはシャント閉塞試験での門脈圧が重要である。ほとんどの症例でCPSS血管は単一であり、シャント閉塞試験は1血管のみで十分である。今回我々は、シャント血管が複数存在し、方針決定に詳細な血管造影が必要であった症例を経験したのでここに報告する。【症例】1歳1ヶ月男児。マス・スクリーニングのガラクトース高値からCPSSと診断された。1歳時に肺高血圧出現と肝機能障害進行、高アンモニア血症の急激な進行から、門脈体循環シャントの結紮適応評価目的で当院紹介となった。造影CTからは門脈は未発達で、門脈本幹から下大静脈に走行するCPSSを1本認めた。カテーテル検査においても、上腸管膜動脈造影からは1本のシャント血管のみ同定された。下大静脈経由でシャント閉塞試験を施行したところ、門脈圧上昇は軽度でありCPSS結紮可能と考えられた。しかし、門脈発達の乏しさから考えてシャント閉塞試験での門脈圧上昇が軽度であり、これら検査所見に乖離を認めたため、シャント閉塞下での上腸間膜造影と逆行性シャント造影を行った。その結果、複数のシャント血管が同定された。主要な2か所のシャント閉塞試験において著明な門脈圧上昇と更に細かいシャント血管が同定され、結紮は不能と判断し肝移植適応と判断した。【まとめ】シャント閉塞試験で門脈圧上昇を認めない症例の中に複数のシャント血管を有するCPSS症例が存在することを念頭におくべきである。CPSS症例に対しては、少なくとも造影CT検査、カテーテル検査での上腸間膜動脈造影によるシャント血管同定、シャント血管閉塞下での上腸管膜動脈造影・逆行性シャント造影が必要と考えられた。