第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

川崎病・冠動脈・血管

ポスターセッション52(P52)
川崎病・冠動脈・血管 3

2018年7月7日(土) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (311+312+313+315)

座長:水野 将徳(聖マリアンナ医科大学 小児科)

[P52-03] 気管切開術後の気管腕頭動脈瘻の治療および予防手術の経験

山本 英一1,2, 中野 威史1,2, 新野 亮治6, 石田 也寸志1, 城賀本 敏宏2, 檜垣 高史2, 石井 榮一2, 石戸谷 浩4, 高木 太郎3,5, 本多 伸光3 (1.愛媛県立中央病院 小児科, 2.愛媛大学医学部 小児科, 3.愛媛県立中央病院 耳鼻咽喉科, 4.愛媛県立中央病院 心臓血管科, 5.愛媛県立新居浜病院 耳鼻咽喉科, 6.愛媛県立中央病院 新生児内科)

キーワード:気管切開, 気管腕頭動脈瘻, 両骨鎖骨下動脈バイパス術

【背景】気管切開後の合併症として、気管腕頭動脈瘻がある。耳鼻科領域では致死率の高い重要な合併症の一つであるが、小児科ではあまり知られていない。しかし、手術時期、手術方法には、腕頭動脈(以後BA)が関与しているため、小児循環器医や心臓外科医も知るべき合併症である。【症例1】11歳女児。溺水による低酸素性脳症、重症心身障害児にて、外来でフォロー。2歳時に気管切開を施行。1か月前の受診時には問題はなかった。突然の気管からの出血で受診。以前の誤嚥性肺炎を診断するための胸部CTにて、気管とBAが接していることが確認された。気管腕頭動脈瘻による出血が疑われ、緊急手術となった。BAに瘻孔が確認され、その部位を全周切除し、端々吻合を行った。以後再燃は認めていない。【症例2】17歳男。デュシャン型筋ジストロフィー。16歳時に原因不明の呼吸停止による心停止が認められが、蘇生に反応した。その時のCTにてBAと気管が近接していることが確認された。気管腕頭動脈瘻のリスクはあったが、気道狭窄が強く気管切開を施行した。術後1年にて、再検したところ、前回同様同部位は接していた。心臓外科、耳鼻科、小児循環器科、小児神経科と今後のリスクを含め検討し、外科的な治療方針となった。血管造影を行い気管とBAの位置の確認をした。術式は、両側鎖骨下動脈を人工血管でバイパスし、最後にBAを結紮した。術後の経過は良好である。【考察】重症心身障害児においては胸郭の変形がほぼ必発である。その結果、BAは気管の前面を横送し、気管腕頭動脈瘻や気管圧迫をおこす。前者では、BAが破裂することがあり致命的である。今回1例は幸いにも救命できたが、出血を起こす前に発症を予知し、その対応が重要である。症例2のように、関連科と連携し、定期的な経過観察の中で、外科的予防治療の介入時期を含め検討することが、予後を改善させる。