[P52-03] 気管切開術後の気管腕頭動脈瘻の治療および予防手術の経験
キーワード:気管切開, 気管腕頭動脈瘻, 両骨鎖骨下動脈バイパス術
【背景】気管切開後の合併症として、気管腕頭動脈瘻がある。耳鼻科領域では致死率の高い重要な合併症の一つであるが、小児科ではあまり知られていない。しかし、手術時期、手術方法には、腕頭動脈(以後BA)が関与しているため、小児循環器医や心臓外科医も知るべき合併症である。【症例1】11歳女児。溺水による低酸素性脳症、重症心身障害児にて、外来でフォロー。2歳時に気管切開を施行。1か月前の受診時には問題はなかった。突然の気管からの出血で受診。以前の誤嚥性肺炎を診断するための胸部CTにて、気管とBAが接していることが確認された。気管腕頭動脈瘻による出血が疑われ、緊急手術となった。BAに瘻孔が確認され、その部位を全周切除し、端々吻合を行った。以後再燃は認めていない。【症例2】17歳男。デュシャン型筋ジストロフィー。16歳時に原因不明の呼吸停止による心停止が認められが、蘇生に反応した。その時のCTにてBAと気管が近接していることが確認された。気管腕頭動脈瘻のリスクはあったが、気道狭窄が強く気管切開を施行した。術後1年にて、再検したところ、前回同様同部位は接していた。心臓外科、耳鼻科、小児循環器科、小児神経科と今後のリスクを含め検討し、外科的な治療方針となった。血管造影を行い気管とBAの位置の確認をした。術式は、両側鎖骨下動脈を人工血管でバイパスし、最後にBAを結紮した。術後の経過は良好である。【考察】重症心身障害児においては胸郭の変形がほぼ必発である。その結果、BAは気管の前面を横送し、気管腕頭動脈瘻や気管圧迫をおこす。前者では、BAが破裂することがあり致命的である。今回1例は幸いにも救命できたが、出血を起こす前に発症を予知し、その対応が重要である。症例2のように、関連科と連携し、定期的な経過観察の中で、外科的予防治療の介入時期を含め検討することが、予後を改善させる。