[P58-01] 乳児僧帽弁人工弁置換:左房内非定型的置換術後の経過
Keywords:mitral valve replacement, mechanical valve, prosthetic malfunction
乳児期発症の僧帽弁疾患に対する手術介入での第一選択は形成術であることは異論ないが、人工弁置換(MVR)の選択は手術手技・長期予後の両面で問題を有する。今回左房内に非定型的MVRを要した2乳児例の術中・術後経過について観察した。【対象・手術】対象の2例は体血圧を凌駕する高度肺高血圧(PH)を伴う先天性僧帽弁狭窄の女児1例、ショック状態で搬送された乳児特発性検索断裂による急性僧帽弁逆流の男児1例で手術時月齢/体重は5ヶ月/6.1kg、6ヶ月/6.4kgであった。いずれも弁形成不能のためMVRとなった。弁輪径狭小のため左房内傾斜法(症例1)、弁輪上水平法(症例2)を用い、SJM17mm弁を選択した。術後循環動態は安定したが後者では術後早期に血栓弁となり血栓溶解療法を要した。【経過観察】症例1は体重増加に伴い早期からMS+PH・心臓喘息に準じた循環動態を示し体重増加不良・運動制限が見られたため3歳5ヶ月(13.6kg)時に再MVR(SJM19mm弁)となった。再手術後は状態の著明な安定が得られた。現時点((再)術後6年4ヶ月、7年6ヶ月)ではいずれもNYHA 1度の状態で経過し(体重23.6kg、23.1kg)、心エコー評価では人工弁通過血流速度(圧較差)は2.4(平均1.4)m/s(23(8)mmHg)、2.6(1.5)m/s(21(10))mmHg)と評価され、今後の人工弁サイズアップの時期について検討中である。【まとめ】17mm人工弁を用いた左房内非定型的MVRは救命の観点では許容されるができれば回避が望ましい。傾斜型植え込みは弁口面積がさらに制約され、早期の再介入を要し、基礎疾患が異なるが水平位での置換が望ましい。いずれも特有の問題点に注意し慎重な評価・経過観察を要する。