[P58-03] 動脈管依存症例に対するdelayed systemic-pulmonary shuntは治療成績を向上しうる
キーワード:シャント, 動脈管依存, 手術
【背景】体肺シャント術(SPS)の成績は良好とはいえず,特に動脈管依存例の成績は不良と報告されている.【目的】SPSの成績を不良にする因子の検討を行うことと,動脈管依存と非依存例の比較を行うことで,SPSの治療成績向上のための課題を明らかにすること.【方法】2002-2017年にSPSを行った33例(男:女=19:14,観察期間81±56ヶ月).Norwood型手術などを行った症例は除外した.手術時の日齢,体重,病名,人工心肺使用の有無,シャントサイズや吻合部,アプローチ法,術前後の心臓カテーテル検査所見や主要合併症(死亡,シャント不全)を調べた.主要合併症が発生したC群(n=12),発生しなかったnon-C群(n=21)を比較した.また,動脈管依存のP群(n=21),非依存のnon-P群(n=12)を比較した.【結果】手術時の日齢は74±67日,体重は4.0±1.3kg,単心室症例は18例だった.シャントサイズは3.8±0.3mm,人工心肺使用は6例,吻合部は右肺動脈19例,左肺動脈14例,アプローチは右開胸11例,左開胸13例,正中9例だった.術後12±11ヵ月でカテーテル検査が行われ,術前後のPA indexは194±88,381±234だった.手術死亡は0例で,遠隔死亡は6例,シャント不全は6例だった.C群はnon-C群より人工心肺例が多く(5:1,p=0.016),シャントは右肺動脈吻合が多かった(11:8,p=0.003).P群はnon-P群に比べ日齢が低く(51±44日:116±81日,p=0.014),体重が低かった(3.6±0.7kg:4.8±1.6kg,p=0.008)が,主要合併症発生数に有意差はなかった.【まとめ】手術死亡はなく術後の成績は良好だったが,人工心肺例,右肺動脈吻合例で主要合併症が多く,これらの症例の吻合部位や術式の再考は必要と考える.動脈管依存例は非依存例に比べ手術時期が早く,体重も小さいが予後不良因子とならなかった.日齢10前後で手術を行うことが多い海外の報告と比べ手術時期を遅らせる戦略が,良好な成績の一因と考えられた.動脈管依存症例の手術至適時期を検討することがSPSの治療成績向上のための課題と考えられた.