[P58-04] 左肺動脈右肺動脈起始を伴う大動脈縮窄複合の1例
Keywords:大動脈縮窄, 左肺動脈右肺動脈起始, 大動脈弓再建
【背景】大動脈縮窄複合は新生児期・早期乳児期に手術介入が必要な疾患であり、手術戦略は多岐にわたる。その中でも低体重児、合併奇形併発児においては手術戦略の検討が症例ごとに必要である。今回我々は、肺動脈と気管支の形態異常を伴う低出生体重児の大動脈縮窄症に対し、初回手術の工夫により良好な術後経過を得たため、検討し報告する。【症例】手術時日齢28、手術時体重2360g、女児。【診断】大動脈縮窄症、大動脈弓低形成、心室中隔欠損症、左肺動脈右肺動脈起始。【経過】在胎37週0日、出生体重2050gで出生。日齢12で大動脈縮窄症を疑われ、精査加療目的に当院へ転院となった。大動脈縮窄複合の診断で、早期の手術介入が必要であるが、低体重児のため段階的根治の方針とした。また左肺動脈右肺動脈起始を認め、大動脈弓と下行大動脈の直接吻合では左肺動脈の圧排が危惧されたため術式の改良を検討した。【手術】初回手術は大動脈弓再建と肺動脈絞扼術を施行した。左開胸、非人工心肺補助下にて、modified Amato technique、extended direct anastomosisによる大動脈弓再建を行った。左総頚動脈と左鎖骨下動脈を側側吻合し、左鎖骨下動脈と下行大動脈との側端吻合を行った。肺動脈絞扼は22mmに設定した。術中・術後の上下肢の圧較差はなく、左肺動脈の狭窄の所見もなし。術後8日目に抜管可能であった。その後も経過良好で退院となり、現在は根治術待機中である。【考察】左肺動脈右肺動脈起始を伴う大動脈縮窄複合では、通常のextended direct anastomosisでは左肺動脈の圧排の懸念があるため、下行大動脈が前方に牽引されない術式を選択する必要があった。小弯側の距離を温存しつつ再建を行ったが、術後の上下肢の圧較差なく、左肺動脈狭窄も認めず、良好な経過を得ることができた。今後の問題点としては、根治術時に左肺動脈の形成術に関しては検討が必要である。