[P59-01] 劇症型心筋炎に合併した右房内血栓によりECMO開始前にPICUで血栓除去を要した1例
Keywords:急性心筋炎, 体外循環, エコー
劇症型心筋炎により血行動態の破綻をきたした際、ECMOは重要な治療手段である。今回、ECMO導入前に経食エコーで巨大な右房内血栓を発見し、緊急血栓摘除後ECMOを開始し救命できた症例を経験した。 症例は生来健康な3歳女児。数日前から38度後半の発熱あり、近医で急性感冒と診断され抗生剤など処方された。入院2日前から顔、四肢の著明な冷感、腹部症状を認め再度、近医受診した。その際、不整脈を認めたが緊急性はないと判断され様子をみられていたが、翌日けいれん重積、心拍数40の徐脈のため精査目的に当院PICU緊急搬送となった。来院時、けいれんは認めなかったが意識混濁、心拍数28の完全房室ブロック、右側胸部誘導のST上昇を認めた。胸部レントゲン上心拡大、心エコーにて収縮力低下及び重度の循環不全を認めたため劇症型心筋炎と診断した。直ちに挿管管理し、循環作動薬を開始したが改善せず徐脈、心停止を繰り返したためECMOが必要とされた。送血脱血管のサイズから開胸でのECMOが適当と判断した。開胸しECMO開始前に経食道エコーを施行したところ右房壁に付着する2.5cm弱の血栓と三尖弁に付着する5mm大の血栓を認めた。このためPICUで急遽人工心肺、心停止下に右房経由で血栓除去後、大動脈送血、右房脱血にてECMOを導入した。免疫グロブリン、ステロイドパルスを術後投与した。徐々に心機能の改善認め、術後6日目にECMO離脱に成功し、13日目には抜管、28日目には経過良好で退院した。なお、術後の頭部MRIでは明らかな出血、塞栓症による所見認めなかった。また明らかなウイルス抗体価の上昇は認めなかった。現在、外来通院中である。 劇症型心筋炎で右房内巨大血栓を認めた症例を経験した。心機能障害に伴う心内血栓の可能性も考慮し、ECMO導入前に積極的に経胸壁に加え経食エコーが必要かもしれない。