[P59-05] 鎖骨下動脈起始異常およびKommerell憩室を伴う血管輪症例へのアプローチ
Keywords:血管輪, Kommerell憩室, 大動脈
【はじめに】右側大動脈弓に伴う左鎖骨下動脈起始異常症例ではKommerell憩室と呼ばれる左鎖骨下動脈中枢側の拡張がみられることがある。これは胎生期第四弓の遺残と言われているが、これが気管や食道を圧迫し、狭窄症状を呈することが多い。これに対する手術は従来より種々の方法が報告されているが、我々は生後2カ月で呼吸器症状を呈した乳児例に対し左鎖骨下動脈移植を伴うKommerell憩室の切除を行った。【症例】出生前より右側大動脈弓が指摘されていた男児で、38週3066gで出生した。生後2カ月で喘鳴を生じ、精査の結果右側大動脈弓、左鎖骨下動脈起始異常、Kommerell憩室と診断された。術前CTおよび気管支内視鏡では気管の狭小化および左右からの拍動性の圧迫が確認された。生後5カ月で左鎖骨下動脈移植を伴うKommerell憩室の切除を行った。手術は右側臥位とし左側第3肋間開胸でアプローチした。動脈管を離断したのちヘパリン投与。Kommerell憩室を切除し欠損した大動脈壁は2層で閉鎖した。左鎖骨下動脈は左頸動脈に吻合した。術後12日で合併症なく退院し、上肢血圧の左右差を認めず、特に問題なく外来管理されている。切除されたKommerell憩室の病理組織診断では、壁肥厚、中膜壊死、弾性繊維の断裂および平滑筋細胞の錯綜が認められた。【まとめ】我々の調べうる限り、生後5カ月で本術式を施行された報告はない。Kommerell憩室は嚢胞壊死を伴うムコイド中膜変性を有するため、大動脈瘤や大動脈解離の原因となる可能性がある。そのため血管輪解除手術の際に、Kommerell憩室の切除を行う必要があると考えられる。