[P61-03] 二心室修復を目指したが狭小左側房室弁のため最終的に単心室修復した完全型房室中隔欠損症の一例
キーワード:AVSD, Univentricular repair, congenital heart desease
【背景】完全型房室中隔欠損症(cAVSD)は一般的に心内修復術による二心室修復(BVR)を目指すことが多い.しかしながら一側心室または一側房室弁の低形成がある場合,単心室修復(UVR)を必要とする症例がある.当初BVRを目指し姑息術を行ったが,後に狭小左側房室弁が判明しUVRに切り替えざるを得なかった症例を経験したので報告する.【症例】現在5歳の非ダウン症の女児,低出生体重児として出生後にcAVSD,両側上大静脈と診断し,生後3ヶ月で肺動脈絞扼術(PAB)を行った.両心室サイズはほぼ正常で差が無いためBVRの方針で経過観察したが,2歳時に心エコー検査で狭小左側房室弁,特にleft mural leafletがほとんど無く,左室単一乳頭筋であることが判明した.この時点での心内修復は延期し,体重増加を待ち僧帽弁置換を含めてBVRを目指す方針とし,低酸素血症に対しBTシャント(BTS)追加を行った.BTS追加後に低酸素血症は改善したが,房室弁閉鎖不全の悪化と心機能の低下が進行し,心不全となったため,長期入院による心不全治療を必要とした.β遮断薬,ACE阻害剤,利尿剤の積極的投与にて心機能はわずかに改善傾向となったが,体重増加もほとんどみられず,僧帽弁置換によるBVRを断念,UVRの方針とし4歳時に両方向性グレン(BDG)手術を行った.BDG術後は心不全は悪化することなく5歳時にフォンタン手術を行った.【考察】当初BVRの方針であったためPAB後に再度姑息術としてBTSを追加したが,結果的に心不全を悪化させた可能性がある.cAVSDにおいて両心室のサイズが正常範囲で差が無い症例においても房室弁のサイズに大きな差がみられBVRが困難な症例があるため,慎重な術式選択が必要である.特に心エコーでの房室弁短軸像にて各弁尖の形態と大きさ,開口面積を詳細に評価することが重要である.