[P61-06] 肺動脈低形成症例に対する右室流出路再建術後の問題点
キーワード:肺動脈低形成, ミスマッチ, 心不全
背景:健全な肺動脈は末梢ほど肺血管面積が増加する。一方、右室流出路低形成疾患においてはチアノーゼ改善や中枢側肺血管発育の目的で、肺血管床が充分でなくても心内修復術を行うことがある。このような症例では肺動脈の中枢が末梢血管床に比較して太い、中枢・末梢血管ミスマッチが存在し、肺動脈PTAの役割は狭窄解除に加えて肺血管床の拡大が重要な目的となる。本検討では修復後に、あるいはカテーテル治療によって末梢肺動脈床成長が得られたかを中心肺動脈が低形成な肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損症の症例について検討した。方法:右室流出路再建後PAVSD10例・32回の心臓カテーテル検査を対象とし、肺血管床の指標の肺血管抵抗 (Rp)および末梢肺血管径 (上葉枝分岐手前)、中枢側肺動脈の代表として近位部肺動脈径(左右分岐後)を測定した。更にwave intensity(WI)を用いて心室-肺動脈間の血行動態を解析した。結果:15回のカテーテル検査でPTAが行われ、40%の病変に20%以上の血管径拡張が得られた。PTAを行った症例では肺血管抵抗 (Rp)は4.8±1.5U・m2が遠隔期検査において4.4±1.7 U・m2と低下し (p<0.05)、末梢側肺動脈血管径も拡張傾向を認めたが、PTAを施行しなかった症例では有意な変化を認めなかった。PTA施行の有無にかかわらずほとんどの症例で右心系特に右室流出路が拡大しており、WI解析では典型的なファロー四徴症術後症例と比べてW1が低くW2およびnegative WIが大きい波形を示した。従って右室収縮力低下とともに肺動脈逆流を受け止める拡張期右室伸展刺激が強いこと、収縮早期の拍出を受けとめられる肺血管床が不足していることが示唆された。結論:修復早期に存在する肺動脈の中枢-末梢血管ミスマッチは修復後のPTAによって改善可能ながら充分でなく、修復前にPA indexに留まらない末梢肺動脈床の拡張を戦略に組み入れる必要がある。