[P62-01] 発作性上室性頻拍に伴い頻拍誘発性心筋症の病態を呈した新生児例
キーワード:発作性上室性頻拍, 頻拍誘発性心筋症, 新生児
【背景】頻脈に伴い可逆性に心機能が低下することが報告されているが、新生児・乳児症例の報告は少ない。今回、発作性上室性頻拍による頻拍誘発性心筋症の病態を呈した新生児を経験したので報告する。【症例】日齢29の女児。在胎41週0日、2960gで出生し、生来健康であった。1ヶ月健診時に頻脈および活気不良を指摘され、精査目的に紹介となった。受診時、体温は37.2℃、SpO2 96%(room air)、心音は整で減弱はなく、雑音は聴取されなかった。末梢冷感があり、2日程前から哺乳量減少に気付かれていた。胸部レントゲンでは軽度の心拡大(CTR 0.57)を認めた。心電図は心拍数280-300bpmのregular narrow QRS tachycardiaを認め、逆行性P波はQRSの少し前に位置しlong RP’ tachycardiaであった。頻拍はATP 0.15mg/kg急速静注で洞調律に復し、室房ブロックで頻拍は停止したので、uncommon AVNRTと判断した。心臓超音波検査では、左室駆出率低下(57%)および軽度の僧帽弁逆流を認めたが心嚢水貯留はなく、5mm程度の心房中隔欠損以外は心内奇形を認めなかった。NT-pro BNPは28708 pg/mLと著明高値であった。入院の上、心不全に対して利尿剤内服で治療を行った。頻拍発作の再発はなく、胸部レントゲンおよび心臓超音波検査所見は経時的に改善した。入院中に両親に聴診手技を指導し、退院後も自宅で聴診による心拍数確認を行う事とした。入院6日目にCTR 0.49、左室駆出率(70%)と正常化し、NT-pro BNP 1217pg/mLまで低下し退院となった。生後2ヶ月時に頻拍が再発したが、自宅での聴診所見より頻拍発作から12時間以内での受診となった。NT-pro BNPは21779pg/mLと上昇し、ごく軽度の心拡大および左室駆出率低下を認めたが、頻拍停止後はいずれも速やかに改善した。【結論】乳児期早期の頻拍発作では、短期間に心機能低下を来す可能性が高く、早期発見と治療が重要である。