[P63-02] LQT8異型Phenotypeの2例
Keywords:QT延長症候群, Timothy症候群, 表現型
【背景】CACNA1C変異に起因するQT延長症候群8型(LQT8)は、顕著な心臓外症状を伴うTimothy症候群として知られている。我々は、学校検診でQT延長を指摘、典型的Phenotypeを欠如するにも関わらず、CACNA1C変異が確定したLQT8の2例を経験している。【目的】典型Phenotypeを欠くLQT8の臨床像を明らかにすること。【症例1】15歳女性。身体所見;異常なし。既往歴;ASD自然閉鎖。失神なし。家族歴:失神・突然死なし。心電図;QT/QTc(Fridericia)=449/473msec(70bpm)、トレッドミル;負荷後QT延長増強、不整脈なし。遺伝子変異; p.T558M(c.1673c>t)。【症例2】13歳男性。身体所見;異常なし。既往歴:失神なし。家族歴;失神・突然死なし。QT/QTc(Fridericia)=449/473msec(70bpm)、トレッドミル;負荷後QT延長増強、不整脈なし。遺伝子変異; p.R2012W(c.6034c>t)。【考察】Timothy症候群(LQT8)は、CACNA1C変異による心筋L型Caチャネル(Cav1.2)機能獲得型障害、内向きCa電流増強、活動電位持続時間延長を本態とする、遺伝性QT延長症候群の中でもユニークな疾患であり、β遮断薬等薬物治療の効果は限定的で、突然死リスクが高い。この変異は多臓器に発現して多様な身体所見を呈し、特に合指趾症、頭部無毛、小歯症はほぼ全例に合併するとされていたが、近年Phenotype欠如例の報告がある。LQTSに対する治療介入としてCaチャネル遮断薬は一般的ではないが、LQT8に対する有効性を示唆する報告がある。【結論】QT延長例に対する遺伝子解析は、LQT8異型Phenotypeの診断に基づく薬物治療の最適化に貢献する可能性がある。