[P64-01] 重症アナフィラキシーに対してエピネフリン投与をおこなったQT延長症候群の男児例
Keywords:先天性QT延長症候群, アナフィラキシー, アドレナリン
【背景】先天性QT延長症候群(以下LQT)におけるエピネフリン負荷試験時に心室性不整脈が誘発されることが報告されており、アドレナリン投与による不整脈の誘発が懸念される。今回、重症アナフィラキシーに対するエピネフリン投与時にQT延長が顕在化した症例を報告し、その対応について検討した。【症例】症例は3歳男児、食物アレルギーとLQT家族歴があり、本児もQT延長を指摘されている。安静時心電図ではHR 81 bpm、QTc 0.490 secであった。カシューナッツを初めて摂取した45分後に蕁麻疹、咳嗽が出現し、呼吸困難が進行するため救急車で来院した。アナフィラキシー(重症)の診断でアドレナリン0.01mg/kgの筋注をうけ、速やかに症状は改善した。アドレナリン投与30分後の心電図でHR 110 bpm、QTc 0.525 secと延長し、T波にnotchがみられた。その後の観察で心室性不整脈や交代性T波はみられず、7時間後の心電図ではHR 89 bpm、QTc 0.480 secと改善した。家族歴として、母は高校生よりQT延長を指摘されQTc 0.458sec、上気道炎罹患中にソファーから立ち上がったタイミングでの失神既往あり、母方祖母はQTc 0.494secで夜間トイレに行く際の失神歴がある。本人・母・祖母の遺伝子検査を提出し、いずれもKCNQ1のexon3にミスセンス変異p.R190Q(c.G569A)を認め、LQT(Type1)と判明した。患児へはエピペン処方の上、使用する際には救急車を要請してAED装着下でエピペンを使用し、速やかに医療機関を受診する様に指導した。また救急隊との連携のため救急隊へ情報提供を行った。【考察】LQT患者ではアドレナリンや抗ヒスタミン薬が不整脈の誘発リスクとなる事に注意が必要であり、アドレナリン投与時には心電図モニターや除細動器の準備が望ましい。アナフィラキシーの対応が必要な患者には家族歴なども含め、QT延長の有無を確認しておく必要がある。