[P65-03] 感染性心内膜炎を合併したWilliams症候群の一例
キーワード:感染性心内膜炎, ウィリアムズ症候群, 僧帽弁閉鎖不全症
【背景】Williams症候群(WS)に合併する僧帽弁逸脱症(MVP)とそれによる僧帽弁逆流(MR)は経年的に増悪することが知られているが、MRによる感染性心内膜炎(IE)の報告は極めて希である。【症例】30歳女性。妖精様顔貌と大動脈弁上部狭窄(supra AS)の所見からWSと診断された。5歳時にsupra ASに対してDoty手術を行い、術後の再狭窄はみられていない。一方でMVPによるMRは徐々に増悪し、30歳時には後交連と前交連の2カ所から出現するsevere MRであった。入院2か月前に歯科治療を行った。入院1か月前から39~40℃の弛張熱と下痢が出現し、2週間で約10kgの体重増加と全身の浮腫、胸部X線での著明な心拡大、12誘導心電図で心房細動(Af)がみられたため、うっ血性心不全の増悪と判断し、利尿剤・抗凝固薬投与を開始した。経食道心臓超音波検査(TEE)で血栓形成がないことを確認し電気的除細動で洞調律へ復帰した。また、僧帽弁に付着する疣贅を認め、血液培養で緑色連鎖球菌が検出されたためIEと診断し、4週間の抗菌薬治療を行った。以降、血液培養と炎症反応は陰性化したため入院5週間目に退院となった。治療により心不全は改善したものの左房拡大と重度MRは残存した。退院3か月後に僧帽弁形成術を行い、現在術後経過観察中である。【まとめ】WS患者は歯科的異常を合併する頻度が高く、更にMRは成人期に問題になることが多いため、WS成人患者における発熱の原因としてIEは重要な鑑別診断となる。MRに対する外科介入としては、WS患者が精神発達遅滞を伴うことが多いため、抗凝固療法が必要な弁置換術の選択は慎重にならざるを得ない。