[I-OR01-03] タダラフィル中止後に蛋白漏出性胃腸症の軽快を認めた単心室のFontan/Glenn術後の3例
Keywords:蛋白漏出性胃腸症, タダラフィル , 血漿蛋白非結合型分率
【背景】フォンタン術後の蛋白漏出性胃腸症(PLE)は、未だ予後不良な合併症である。単心室循環におけるフォンタン/グレン術後の反復するPLEにおいて、タダラフィル (TAD)中止後に症状の軽快を認めた3例を経験した。【症例】症例1)15歳女児、三尖弁閉鎖症で2歳でフォンタン術を施行し、10歳でPLEを発症した。利尿剤やベラプロスト(BPS)・ボセンタンを開始したが、Alb低値が持続しTADを追加した。その後TAD・マシテンタン(MAC)の2剤を使用した。心不全治療目的で硝酸イソソルビドテープを導入し、TADを中止したところ、4か月間 Alb値は維持でき、外来管理が可能となった。症例2) 11歳女児、単心室症で1歳時にグレン術を施行した。術後5年の心臓カテーテル検査で肺動脈圧は26mmHgと高値で、利尿剤・エナラプリル・BPS・TADで管理した。8歳でPLEを発症しMACを追加した。静脈のうっ滞の改善目的で硝酸イソソルビドテープ導入し、TADを中止すると低血圧は改善し、4か月間 Alb値は維持でき、外来管理が可能となった。症例3)13歳女児、左心低形成症候群で2歳でフォンタン術を施行した。7歳でPLEを発症しシルデナフィルを開始したが、副作用のためTADに変更した。再燃を繰り返し、MACを追加したが、体血圧の低下を認めたためTADを中止したところ、低血圧とPLEの症状改善を認めた。モニタリング可能であった症例1,2において、Alb低下時はTADの血漿蛋白非結合型分率が上昇する傾向を認めた。【考察】薬物の効果は血漿蛋白に結合していない非結合型が薬効を示す。血中Albが低値のPLE患者では、TADの血漿蛋白非結合型分率が増加しその薬効が増強する結果、低血圧をきたし、腸管血流低下をもたらし、PLEを助長させる要因になっていた可能性が考えられた。【まとめ】TADは、PLEにおいて肺高血圧を伴う症例に対して比較的よく使用されている薬剤であるが、PLEによる薬物動態の変化を考慮した治療選択を検討することが重要と思われた。