[I-OR03-03] 胸骨正中切開、心膜外、胸腔外到達法によるBlalock-Taussigシャント手術
キーワード:姑息術, 体肺動脈シャント, 手術
【背景】正中到達法によるmodified Blalock-Taussigシャント(mBTS)は、体肺動脈側副血管を生じにくいなどの利点がある一方、術後急性期死亡率は5-15%と側開胸到達法より高い。原因として側開胸に比べ術後高肺血流状態が進行しやすく容量負荷からの急性心不全が死亡リスクになると考えられている。当院では、心室の過度の容量負荷、過伸展を抑制する心膜機能に着目し、心膜切開せずに心膜外胸腔外到達による正中mBTS手術を実施しているので治療成績を報告する。【方法】2016年以降延37回のmBTS症例中、無作為に11例延12回の胸骨正中切開心膜外胸腔外到達法によるmBTS手術を施行。手術時日齢31日(7-519日)。体重3.1kg(2.4-7.3kg)。ファロー四徴症(1例)、完全大血管転位症III型(2)、純型肺動脈閉鎖(2)、両大血管右室起始症、肺動脈閉鎖(2)、右室型単心室肺動脈閉鎖(3)、三尖弁閉鎖(1)で、うち動脈管依存性肺循環10例。シャントサイズは3.5mmが5例、4mmが7例。【結果】右側大動脈弓症例が7例で、シャント側は大動脈弓反対側8例、同側4例。中枢側吻合は腕頭動脈8例、鎖骨下動脈3例、総頚動脈1例。周術期死亡はなし。術後心嚢液貯留を3例に認めた。動脈管依存性肺循環のうち4例はmBTS時に動脈管結紮、1例は術後高肺血流状態による心不全で緊急動脈管結紮を要した。エコー上主心室拡張末期面積(対正常値比)は、術前110±41%が術後137±43%と増加していた(P=0.02)が、房室弁逆流が1段階以上増悪した症例は認めなかった。5例は二心室修復治療で1例到達、4例待機。6例は単心室循環治療で、Fontan到達1例、グレン手術(BDG)到達3例、BDG待機1例、1例が房室弁逆流による心不全でBDG時に死亡。【結論】胸骨正中切開心膜外胸腔外到達によるmBTS手術は、大動脈弓形態、左右肺動脈に関わらず可能であった。術後心嚢液貯留に留意する必要があるが、有用な手術手技であると考え、症例を重ねて評価していきたい。