第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

外科治療遠隔成績

一般口演5(I-OR05)
外科治療遠隔成績 1

2019年6月27日(木) 15:40 〜 16:30 第4会場 (中ホールA)

座長:芳村 直樹(富山大学医学部 第一外科)
座長:太田 教隆(愛媛大学大学院医学系研究科 心臓血管・呼吸器外科学)

[I-OR05-01] Fontan手術後の抗凝固療法の検討

三輪 晃士1, 盤井 成光1, 石丸 和彦1, 久呉 洋介1, 長谷川 然1, 石井 陽一郎2, 青木 寿明2, 高橋 邦彦2, 萱谷 太2, 川田 博昭1 (1.大阪母子医療センター 心臓血管外科, 2.大阪母子医療センター 小児循環器科)

キーワード:フォンタン手術, 術後遠隔期, 抗凝固療法

【背景】Fontan手術例における血栓予防薬として,抗血小板薬を基本とし,血栓塞栓症のリスクが高い症例に対しワーファリン(Wf)を追加する方針としてきた.【目的】抗凝固療法の現状と有害事象の発生状況を検討.【方法】対象は1995年以降当院でFontan手術を施行した245例.Extracardiac conduit226例,lateral tunnel18例,intra-atrial conduit1例でfenestrationを30例に作成.抗血小板薬は3~5mg/kg/日内服とし,Wf投与例はPT-INR1.5~2.0目標に管理.抗凝固薬の投与内容と期間,出血・血栓に伴う有害事象の発生状況について検討.【結果】術後観察期間は中央値7.7(0.1-23.7)年で,遠隔死8例(突然死4例,感染症2例,心筋梗塞1例,心不全1例).術後早期は全例にアスピリンとジピリダモール(あるいはトラピジル)を投与し,31例でWfを追加.Wf追加理由はfenestration10例,人工血管屈曲・狭窄6例,末梢肺動脈狭窄6例,低心機能3例,他6例.アスピリンは全例継続.ジピリダモールは197例(80%)で術後27(2-235)ヶ月に中止,Wfは20例(65%)で術後16(3-150)ヶ月に中止.遠隔期に肺循環のうっ滞を認めた26例でWfを開始.安定期のPT-INRはWf投与例で1.55±0.14.有害事象は人工血管内血栓形成5例(Wf投与例/非投与例は0例/5例で,横隔神経麻痺2例,下大静脈弁残存1例,導管の屈曲1例でいずれも手術後早期に診断),遠隔期(発生時期は3.1±6.6年)に脳梗塞3例(1例/2例で原因は低心機能・不整脈による心内血栓が2例)末梢肺動脈閉塞2例(1例/1例),心筋梗塞1例(1例/0例),消化管出血5例(0例/5例で1例はPLE併発),気道出血3例(1例/2例で重症鼻出血1例,気道出血1例,肺出血1例)を認めたが,頭蓋内出血発生は認めず.Wf投与例(50例)/非投与例(195例)で梗塞イベントは3例(6%)/8例(4%)(P=0.43),出血イベントは1例(2%)/7例(4%)(P=0.57)と差を認めず.【結語】血栓塞栓症のリスクが小さい症例に対し,小児期は抗凝固薬としてアスピリン内服のみで妥当と考える.