[I-OR08-05] 進行性筋ジストロフィーによる心筋障害診断:心臓MRIとバイオマーカーの比較
Keywords:筋ジストロフィー, 心臓MRI, バイオマーカー
【背景】心臓MRIの遅延造影(LGE)は進行性筋ジストロフィーによる心筋障害の検出に有用だが、心臓MRIを実施できる施設は限られており、代替可能なバイオマーカーの確立が望まれる。【目的】進行性筋ジストロフィーによる心筋障害をLGEで定量し、既存のバイオマーカーと比較検討すること。【方法】当院でLGEを含む心臓MRIを撮像したDuchenne型(20名)およびBecker型(13名)の筋ジストロフィー患者を後ろ向きに調査した。心臓MRIは左室駆出率および左室心筋に占めるLGEの割合(%LGE)を心筋障害範囲として定量し、撮像時の血中クレアチニンキナーゼ(CK)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、心筋トロポニンT(TnT)の測定値と比較した。%LGEは正常心筋信号の標準偏差の5倍を閾値とした。【結果】患者の年齢中央値は11.9歳(四分位範囲6.3~16.0歳)、男性が32名で、左室駆出率と%LGEの中央値はそれぞれ53.8%(四分位範囲43.8~58.3%)、3.3%(四分位範囲0.1~14.3%)であった。血中CK、BNP、TnTの中央値はそれぞれ3999 IU/L(四分位範囲1904~11025 IU/L)、8.4 pg/mL(四分位範囲5.8~20.7 pg/mL)、0.044 pg/mL(四分位範囲0.015~0.091 pg/mL)で、9名(27%)にBNP上昇(基準値18.4 pg/mL以下)、24名(80%)にTnT上昇(基準値0.014 pg/mL以下)を認めた。これらバイオマーカーの中でBNPのみが左室駆出率(相関係数-0.70、p<0.001)および%LGE(相関係数0.73、p<0.001)と有意に相関した。BNP上昇は%LGE≧5%を感度95%、特異度57%、陽性的中率89%、陰性的中率75%で診断可能であり、%LGE≧5%に対するBNPのROC曲線下面積は0.79だった。【考察】進行性筋ジストロフィーにおいてLGEで評価した心筋障害に基づく治療戦略が検証されており、これを既存のバイオマーカーで代替できる可能性がある。【結論】心臓MRIのLGEで定量した進行性筋ジストロフィーによる心筋障害の診断に血中BNPが有用だった。