第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

体外循環・心筋保護

一般口演9(I-OR09)
体外循環・心筋保護

2019年6月27日(木) 10:50 〜 11:40 第5会場 (中ホールB)

座長:佐々木 孝(日本医科大学付属病院 心臓血管外科)
座長:井本 浩(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 心臓血管・消化器外科学分野)

[I-OR09-05] 小児心臓手術後の尿中NGAL測定値を用いた人工心肺運転条件の検討

中西 啓介, 川崎 志保理, 天野 篤 (順天堂大学 医学部 心臓血管外科)

キーワード:人工心肺装置, 術後急性腎不全, NGAL

【背景】現在、小児の人工心肺運転の安全域に対する統一された見解は得られていない。また、これまで腎機能障害評価は、尿量や血清Cre濃度を用いてきた。最近、腎機能障害バイオマーカーとして注目されているのがNeutrophil gelatinase-associated lipocain: NGALである。NGALは腎障害時速やかに腎上皮細胞に発現し尿中に排泄され、腎機能障害を鋭敏に反映するとされる。【目的】人工心肺装置を用いた小児心臓手術後の腎機能障害を尿中NGALで評価する。さらに、人工心肺運転に関する因子を検証し、腎機能障害を予防するための人工心肺運転条件を考察する。【方法】2018年6月から2019年1月までに人工心肺装置を用いて先天性心疾患手術を行った46人を対象とする。尿中NGALは術前、ICU入室直後、1、2、4、8、12、24、72時間後に採尿を行った。血清Creは術前、第1、3病日に採血した。AKI病期分類はKDIGO診断基準を用いた。人工心肺装置条件は、還流係数、DO2値、頭・腹部rSO2、Hb値、術中・術後lactateを測定した。さらにNGALが上昇のない群(A群: 19人)上昇した群(B群: 27人)に分けて人工心肺条件を比較した。【結果】患者46人のうち、術後AKIと診断された患者は、24人であった。術後ICU入室1時間後NGAL値のカットオフ値を7.8ng/mlとしたとき、感度は67%、特異度55%、ROC曲線下方面積は0.79であった。有意差を認めていたのは、希釈率(A=21.0%, B=24.0%, p=0.05)、最低腹部rSO2(A=74.0%、B=64.1%、p=0.01)、人工心肺中lactate(A=1.14mmol/ml vs B=1.45mmol/ml, p<0.01)、であった。【考察】腹部rSO2の低下、Hbの低下が術後腎機能障害に影響した可能性があり、術中腹部rSO2低下が無いように人工心肺条件を調整することで腎機能障害を防げる可能性があると考えられた。【結論】人工心肺装置を用いた小児心臓手術では、腹部rSO2を保つことで術後腎機能障害を予防できる可能性がある。