[I-OR11-05] 肝静脈奇静脈吻合によるFontan手術を行った左側相同心の後方視的検討
キーワード:多脾症候群, 肺動静脈瘻, チアノーゼ
【はじめに】左側相同心では術後遠隔期の低酸素血症が問題となることがある。原因の一つにHepatic factorの左右肺動脈への不均衡分布による肺動静脈瘻の発達が想定されている。そのため肝静脈奇静脈吻合によるFontan手術を行い、hepatic factorを両側肺動脈へ均等に供給する方法が考えられている。【目的】当院で肝静脈奇静脈吻合によるFontan手術を行った左側相同心の後方視的検討。【方法】左側相同心のうち肝静脈奇静脈吻合を行った3例と、対照群として通常の肝静脈肺動脈吻合によるFontan手術を行った9例に対して、術前と術後1年のSaO2、肺動静脈瘻の有無を検討した。また術後の下半身の血流の左右肺動脈への分布を検討した。肝静脈奇静脈吻合群に関しては、術式や術後合併症に関しても検討した。【結果】術後1年では2群間にSaO2(肝静脈奇静脈吻合群94±1%:対照群92±3%)と肺動静脈瘻の有無(肝静脈奇静脈吻合群66.7%:対照群66.7%)には有意差はなかった。しかし肝静脈奇静脈吻合群においては、全例で下半身からの血流は左右肺動脈へ均等に流れることが確認できた。肝静脈奇静脈吻合群では1例で椎体を横断する術式がとられた。2例で吻合部狭窄を認め、カテーテル治療を要した。【結論】術後1年ではSaO2や肺動静脈瘻の有無には差がなかったが、hepatic factorの左右肺動脈への供給という目的は達成された。また、肝静脈奇静脈吻合部狭窄を呈する症例があり、適応には十分な検討が必要である。