[I-OR12-01] 北海道における先天性心疾患の胎児診断の有用性
Keywords:胎児診断, 院内死亡率, 緊急入院
[目的]北海道の先天性心疾患(CHD)の胎児診断が出生後の診療に与える影響について評価する。[対象と方法]2003年1月1日~2016年12月31日に生後14日以内に心臓手術を要した症例226例のうち重症心外合併症24例は除外し、胎児心エコー外来開設前の期間(2003-2009年、A群、44例)とその後の期間(2010-2016年、B群、158例)で臨床経過について比較検討した。[結果]出生週数(39.2±0.2週 vs 38.8±0.1週, p=0.12)、出生体重(3018±67g vs 2869±35g, p=0.06)、出生後5分のAPGAR score(8.6+/-0.2 vs 8.3+/-0.1, p=0.18)に有意差はなかった。B群はA群に比して機能的単心室症例が多く(9.1% vs 32.3% p=0.019)。胎児診断率が高かった(20.5% vs 46.8% p=0.002)。診断日齢は有意差はなかった(1.5±0.5日 vs 0.6±0.3日, p=0.11)。B群のほうが搬送日齢 (5.1±0.7日 vs 1.8±0.4日, p<0.0001)と手術日齢 (9.2±0.6日 vs 5.8±0.3日 p<0.0001)が早かった。緊急入院率はB群が有意に低かった(22.7% vs 8.9% p=0.018)。術前状態について、入院時動脈血ガス分析のpH (p=0.21)、呼吸管理症例の割合(p=0.59)、術前のショック症例の割合(p=0.14)には有意差はなかった。初回手術のSTS-EACTS mortality scoreはB群が高かった(1.03±0.10 vs 1.43±0.05, p=0.0004)が、死亡退院率は有意差がなかった(13.6% vs 13.9%, p=1.00)。[考察]緊急入院を回避することはCHD児のリスクを低減させ、搬送先の小児循環器医・小児心臓外科医及び搬送元の小児科医や医療スタッフの労力を軽減させる。B群では死亡率スコアの高い姑息手術を行う単心室循環症例が多かったが、胎児診断率が上昇することで適切な術前管理を行うことができ、院内死亡を回避できた可能性が考えられた。[結語]当院では胎児心エコー外来開設後に胎児診断率が上昇し、緊急入院率が低下した。重症CHD症例が増加し、初回手術に対する死亡スコアは上昇したが、院内死亡率は上昇しなかった。