[I-OR14-03] 心筋線維芽細胞に着目した小児心筋症の病態解明と治療応用
キーワード:心筋線維芽細胞, 心筋症, RNA-seq
【背景と目的】近年様々な遺伝子異常が心筋症の原因として報告されているが、特にDCMやRCMにおいてサルコメアなどの心筋構成蛋白に異常が認められない症例も多く、また同じ遺伝子異常でも全く臨床像の異なる疾患を発症するなど、遺伝子異常だけでは心筋症病態の全体像解明は困難である。一方、心臓における心筋細胞の数は30-40%程度とされ、残りの大部分は心筋線維芽細胞(CF)が占める。CFは単に細胞外基質を分泌して心筋細胞の足場となるだけでなく、心機能維持においてより重要な役割を果たしているのではないかと近年報告されている。そこで我々は小児DCM、RCM患者由来のCFを培養し、網羅的遺伝子発現解析やcell physiology解析、心筋細胞との共培養によるcell-cell interactionの解析から、心筋症の病態解明とともに関連するシグナル異常の同定による新たな心筋症治療ターゲットの同定を試みている。【方法】心移植時・VAD装着時等に小児心筋症患者からCFを単離・培養した。細胞増殖能や遊走能、アポトーシスなどの検証とともに、次世代シークエンサーでのRNA-seqを施行した。RCM 3例、DCM 3例に加え、川崎病後虚血性心筋症1例と移植直後2例を正常対照として解析した。【結果】発現解析の対象遺伝子数は26,255であり、2群間で1.5 Fold change (FC)以上を示した遺伝子数はRCM vs 対照で3,354、DCM vs 対照で2,682、RCM vs DCMで2,786であった。正常対照に対してRCMとDCMいずれも1.5FC以上の差を持つ遺伝子数は1532あった。これらの中にケモカインや成長因子、シグナルペプチドやその合成酵素が含まれていた。【考察】患者由来CFのRNA-seq解析により心筋症患者におけるCFの発現プロファイルの変化が観察され、心筋細胞だけでなくCFも変容していると考えられる。Pathway解析やcell-cell interactionの解析を進めることで、CFがより主体的に心筋症発症に関わっている可能性を検証する必要がある。