[I-OR14-04] 心臓移植後10年以上経過し進行性の右室内膜線維化による重症三尖弁逆流を呈した2例の検討 ~右室内膜線維化は慢性拒絶反応か?~
キーワード:心臓移植, 拒絶反応, 心内膜線維化
【背景】小児心臓移植後の管理において様々な合併症を経験する。小児心臓移植が始まり20年が経過しているが、遠隔期になり今まで経験しえなかった合併症を認め慢性拒絶反応との鑑別に苦慮する場合がある。今後の再移植の検討においても重要と考えられる。【目的】心臓移植後遠隔期における進行性の右室内膜線維化の要因を検討する。【方法】心臓移植後10年を経過し心内膜心筋生検により心筋を採取することすら困難な心内膜線維化を認め、重症三尖弁逆流を呈した2例と同じく10年以上経過した心臓移植後7症例(心内膜正常群)との比較も含めて検討した。【結果】右室内膜線維化の2例は共に移植後10年と14年を経過して重症三尖弁逆流に至っている。前年一桁であった中心静脈圧が約2倍以上に上昇(症例1:7→15mmHg 、症例2:7→17mmHg)、ほぼ同じ値で右室拡張末期圧の上昇を認めた。心筋生検も白色線維性組織しか採取できず重症三尖弁逆流に至った原因として右室内膜線維化による拡張障害の進行が弁尖の可動性に影響したと考えられた。心内膜正常群は1例を除き右室拡張期圧上昇はなく(中央値 6mmHg)、生検も内膜の線維性肥厚は認めていない。免疫抑制剤の種類や拒絶の既往など明らかな差は認めなかったが、右室内膜線維化症例においてIVUSにて冠動脈の内膜肥厚が目立つ印象があった。【考察】今まで心室内膜線維化が慢性拒絶反応として報告された例はない。本来、慢性拒絶反応である冠動脈硬化症もその成因ははっきりしていない。しかし生検組織では心筋には炎症細胞の浸潤がないものの線維性成分に炎症細胞が散在しており、慢性拒絶反応との何らかの関係を疑わせるものと推察している。【結論】心臓移植後遠隔期に発症した進行性の右室心内膜線維化は慢性拒絶反応である可能性がある。三尖弁への介入だけでは右室内膜の線維化による拡張障害の影響を解決するのは困難であり再移植の検討も今後進めていく必要がある。