[I-OR15-02] V3誘導(R+S波)加算値による肥大型心筋症の早期診断に関する検討
Keywords:肥大型心筋症, 心電図, 学校心臓検診
【背景】midprecordial leadsの波高増大はKatz-Wechtel signとも呼ばれ、左室肥大または両室肥大の所見の一つである。肥大型心筋症(HCM)も心室中隔の非対称性肥大が特徴の一つであり、V3誘導のR波とS波(絶対値)の加算値{V3(R+S)}がHCM抽出に有用である可能性がある。【目的】小1、中1、高1の男女別にHCM抽出のための心電図V3(R+S)波高基準値を作成すること。中1以降に診断されたHCM患児の小1時の心電図を検討しこの基準値により早期診断が可能か検討すること。【対象と方法】[1] 基準値の作成;基礎疾患・不整脈・ST/T波異常を有する例を除外した小1; 16,773名、中1; 18,126名、高1; 13,502名、計48,401名の心電図を使用した。HCMの頻度は10万人に2.9人(3.4万人に1人)程度と推測されており、偽陰性を出さないよう2000人から5000人に1人を抽出する暫定的な抽出基準値を検討した。[2] HCMの早期診断の検討;K病院でフォロー中の中1以降の学校心検で診断された12例(男児10例、女児2例、うち女児1例は小4診断)の小1時のECGを入手し検討した。【結果】[1] 基準値の作成;男子は小1、中1、高1がそれぞれ6.0mV、6.0mV、5.5mV、女子はそれぞれ5.0mV、4.5mV、4.0mV程度が妥当と考えられた。[2] HCMの早期診断の検討;12例中4例が小学1年で診断可能であった。うち3例は突然死例、院外心停止例、および中1時心室壁厚が既に19mmあった1例であった。1例は心電図異常を指摘されていたが、心筋肥大が現在の基準値を満たさないため、正常とされていた。【考察・結論】疾患頻度を考慮した統計学的抽出基準値の作成および心室中隔肥厚を反映すると考えられるV3基準の採用により、小4以降に診断されたHCM4例(うち3例は重症)はより早期に診断(疑い)と経過観察・介入が可能と考えられた。今後、実際の学校心検の場で感度・特異度を検討し、最終的な抽出基準を決める必要がある。【研究協力者】加藤太一、加藤愛章、鉾崎竜範