[I-OR15-03] タコツボ型心筋症(Takotsubo cardiomyopathy; TTC)と考え治療した3症例
キーワード:タコツボ型心筋症, 神経疾患, apical ballooning
【背景】TTCは高齢女性での発症が多いとされるが、小児での報告例も散見される。【目的】小児におけるTTCの特徴を検討する。【方法】当院でTTCを疑われた3症例について、原因や症状、検査、治療等について診療録を用いて後方視的に検討した。【結果】(症例1)2歳女児。脳腫瘍摘出1週間後に水頭症が増悪し、けいれんを認めた。心エコーで心尖部優位に心収縮低下を認め、心電図上ST変化は認めなかったがV5,6に陰性T波あり、トロポニンの上昇を認めた。気管挿管しアドレナリン、ミルリノンの投与を開始した。翌日には心収縮は改善みられ、ミルリノンは1週間で終了した。(症例2)4歳女児。けいれんを発症し、併せて心機能の悪化、肺水腫を認め、心筋炎を疑われ当院に紹介となった。心エコーで心尖部の心収縮不良を認め、心電図上の変化はなかったが、トロポニンの上昇を認め、TTCと診断した。アドレナリン、ミルリノンの投与を開始し、ミルリノンは1週間使用した。けいれんは後に二相目があり、MRI所見と併せ二相性脳症と診断した。(症例3)1歳男児。外傷性硬膜下血腫によりけいれんを来し当院に搬送された。心尖部の収縮不良、肺水腫を認め、心電図上QT延長あり、TTCと考えた。ミルリノンを1週間使用した。【考察】3症例ともに心機能悪化の契機となったのは、神経疾患であった。TTCと神経疾患患者における心筋症が同一の疾患である可能性が言われており、2008年に改訂されたMayo criteriaでは頭蓋内出血の除外項目が削除されている。小児では急性冠症候群は少なく、冠動脈疾患の除外目的に血管造影を行うかどうか議論されるが、今回いずれの症例も1つの冠動脈の灌流領域では説明できない左室の壁運動の異常があり、心電図上ST上昇はみられず、早期に心機能の改善を認めたたため、施行しなかった。【結論】小児の日常診療において神経疾患を経験することが多いが、循環障害を伴った場合、TTSの合併が考えうる。