[I-OR16-02] 積極的なアンチトロンビン製剤投与が有用であった新生児血栓症の2例
キーワード:アンチトロンビン, 新生児血栓症, ヘパリン
【背景】無症候性新生児血栓症(NT)の管理は経過観察が基本だが、血栓が進展しヘパリンを中心とした抗凝固療法を必要とする症例がある。しかし、新生児期における抗凝固療法では高用量のヘパリンを必要とすることが多く、凝固線溶系の未熟な背景もあるため重篤な臓器出血を引き起こす。既報によると、この一因として新生児期のAT活性が低い事が考えられている。今回私達は未熟児における無症候性肺動脈血栓症(PAT)と右房内血栓症(RAT)に対し、線溶系の適正化と効果的なヘパリン作用の発現を目的にアンチトロンビン(AT)製剤を積極的に投与し、良好な経過を得た症例を経験したので報告する。
【症例1】在胎34週、体重2,144gで出生した双胎第2子の女児。入院時検査で肺動脈分岐部に高エコー域がみられた。母体合併症と血栓症の家族歴はなかった。本児と同胞の凝固機能は全て週数相当だったが、AT活性は33.4%だった。全身状態は良好で無症候性PATと診断した。AT活性値60%以上を目標にAT製剤を日齢0から間欠的に4回投与した。日齢6から未分画ヘパリン(UFH)10単位/kg/hrを併用、日齢13にPATの消失を確認した。血栓は再発せず、治療による合併症はみられなかった。
【症例2】在胎24週、体重646gで出生した男児。日齢50に腸管壊死のため緊急手術となった。術後の心臓エコーで右房内に高エコー域を確認しRATと診断した。AT活性は26%だった。術直後であるためUHFを使用せず、AT製剤のみ投与した。術後3日目からUFH 10-20単位/kg/hrを併用した。AT製剤を繰り返し投与し、AT活性60%を維持した。血栓は進展せず、外科治療が可能な体格に成長するまで待機できた。合併症はみられなかった。
【考察】新生児血栓症において、AT活性の適正化はヘパリンの使用量を減らし、合併症発生を抑える可能性がある。出血を起こしやすく、外科治療が不可能な新生児・未熟児においては、特に有用な治療選択肢であると考えられた。
【症例1】在胎34週、体重2,144gで出生した双胎第2子の女児。入院時検査で肺動脈分岐部に高エコー域がみられた。母体合併症と血栓症の家族歴はなかった。本児と同胞の凝固機能は全て週数相当だったが、AT活性は33.4%だった。全身状態は良好で無症候性PATと診断した。AT活性値60%以上を目標にAT製剤を日齢0から間欠的に4回投与した。日齢6から未分画ヘパリン(UFH)10単位/kg/hrを併用、日齢13にPATの消失を確認した。血栓は再発せず、治療による合併症はみられなかった。
【症例2】在胎24週、体重646gで出生した男児。日齢50に腸管壊死のため緊急手術となった。術後の心臓エコーで右房内に高エコー域を確認しRATと診断した。AT活性は26%だった。術直後であるためUHFを使用せず、AT製剤のみ投与した。術後3日目からUFH 10-20単位/kg/hrを併用した。AT製剤を繰り返し投与し、AT活性60%を維持した。血栓は進展せず、外科治療が可能な体格に成長するまで待機できた。合併症はみられなかった。
【考察】新生児血栓症において、AT活性の適正化はヘパリンの使用量を減らし、合併症発生を抑える可能性がある。出血を起こしやすく、外科治療が不可能な新生児・未熟児においては、特に有用な治療選択肢であると考えられた。